日米対等 トランプで変わる日本の国防・外交・経済

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祥伝社
842円
208ページ
出版社:祥伝社(2017/02/01)
ISBN-10:4396114974
ISBN-13:978-4396114978
発売日:2017/02/01

2017年1月20日、アメリカではトランプ大統領が誕生した。
世間がヒラリー当選を予想する中で、一貫してトランプ当選を確信していた著者が、アメリカは力強く復活すると断言。そして、日本にもチャンスであると説く。

また、今後の日米関係や、閣僚人事から見たアメリカの政策について詳述し、それをふまえて日本がこれからどういう方向に進むべきかを、国防、外交、経済の点から鋭く考察した。
日本は、アメリカと対等につきあえる、自立した国になれるのだろうか。

日米対等: トランプで変わる日本の国防・外交・経済

トランプはアメリカばかりでなく、外国でも、そして日本でも大変に誤解されている政治家である。何故、誤解されているかと言えば、それはトランプがアメリカの大手メディアと戦って当選した大統領だからである。当選後も彼の米大手メディアとの闘いは続いている。当然、米大手メディアはトランプを誹謗中傷し、彼の実像を伝えようとはしない。そこでトランプの実像が極めて掴みにくいのである。
米大統領選挙の序盤戦である共和党の予備選の段階から、トランプの大手メディアとの戦いは開始されていた。アメリカでは大手メディアの事を「メイン・ストリーム・メディア」略して「MSM」と呼んでいる。日本で言えば所謂「マスコミ」もしくは「大手マスコミ」というのに等しい。
アメリカの大手メディアは概ね左派リベラル系であり、保守系の政治家には厳しい。しかしトランプの場合、保守系のMSMからも嫌われる大統領候補であった。彼は共和党の大統領候補となったが、共和党の既成支配層からはアウトサイダーとして排除されていた。ウォール・ストリート・ジャーナルやFOXテレビは保守系の大手メディアであるが、これらのメディアもトランプを共和党のアウトサイダーとして極めて冷たく扱ってきた。そこでトランプは、リベラル系のみならず保守系のMSMからも不公平な扱いを受けることとなったのである。
アメリカでMSMが大きな力をもって以来、トランプは初めてこのMSMと戦って大統領の座についた政治家である。彼のMSMとの戦いは今も続いているし、彼の政権が続く限り、この戦いは続くのであろう。彼がツイッターを利用するのはMSMの頭越しに直接国民とコミュニケートする為である。MSMは益々激昂してトランプを攻撃することになる。
しかし、米MSMの力は急激に凋落している。それは大手ではない草の根のメディアがインターネットを通じて国民大衆の支持を集めるようになっているからである。筆者が正しくトランプの当選を予測できたのも、こういったアメリカの草の根メディアの動向に注目していたところが大きい。アメリカでは現在、トランプが主導する政治革命のみならず、前代未聞のメディア革命が進行中である。現在のMSMは大きくその影響力を削がれていくことになるだろう。

■日本の大手メディアの過ち

日本の大手メディアは、アメリカ情報に関しては、米MSMの情報をそのままに垂れ流しにしている。これは朝日新聞でも産経新聞でも同様である。朝日はアメリカのリベラル・メディアの論調をそのままに引き写して日本国内に伝え、産経は保守系の米MSMの情報をそのままに日本に伝達している。この為に、日本の大手新聞やテレビ局は押しなべて2016年米大統領選の予測を誤ったのである。
そしてこの過ちは、全く反省されず、日本のMSMは相変わらず同じ過ちを犯し続けている。トランプを誹謗中傷する類の誤った情報を垂れ流しにしているのだ。その為、日本の新聞やテレビを見たのでは、今、アメリカで何が起きているのかを掴むことが出来ない。
そこで我田引水にはなるが、是非、拙著『日米対等』をお読み頂きたい。新書版で全体は200ページ強の読みやすい本である。トランプ政権が何を行なおうとしているのかを解説し、そしてトランプ政権の主要人事について詳しく分析している。勿論、人事と政策は絡んでおり、トランプ政権の主要人事を見ることで、より詳しく政策の方向性が予測できるのだ。
先ず、この書の前書きを引用しておこう。
「本書はアメリカで2017年1月20日に誕生したドナルド・トランプ政権が、そもそも如何なる政権であり、どのような政策を実行しようとしているのかを予測するものである。
トランプ大統領は、アメリカの国力を大きく復活させるだろう。
経済的にも軍事的にも、アメリカは再び強い国になる。
しかしそれは1950年代から60年代の圧倒的で絶対的な覇権国の復活ではなく、相対的な超大国アメリカの復活ということになるだろう。
トランプの政治戦略の基本は、まず強いアメリカ経済を作り、その経済力を以って、軍事的にも超大国を再生しようとするものだ。トランプが敵と見定めるのは、第1にIS(イスラム国)であり、第2にはチャイナである。
そしてトランプは意外にも、対外軍事介入には消極的であり、バランス・オブ・パワーを基本に、世界の秩序維持を考えている。彼はIS壊滅の目的を達すれば、それ以上の中東イスラム世界への軍事介入は行わないだろう。
トランプは、ロシアとの協力の下にISを叩こうとしている。当面、プーチン・ロシアはアメリカの友好国である。親露反中こそトランプ外交の基本路線である。
IS壊滅の後に、トランプが目的とするのは、チャイナの覇権国化の阻止である。習近平はアメリカを凌駕する覇権国化を、その国家目標にしているからだ。
第一に、台湾独立問題も関係して、南シナ海と東シナ海を舞台にする米中の軍事衝突は、最早、不可避であろう。本格的な戦争はなくとも、フォークランド紛争程度の軍事衝突は考えておいた方がよい。
第二に、米中衝突が起きる可能性があるのは、朝鮮半島である。
いずれの場合も、日本は当事者たらざるを得ない。アメリカとしっかりとした同盟関係を築き、この紛争を勝ち抜く以外に日本の未来はない。 今こそ、日本国民の真の覚悟が問われているのだ。」

■本書の構成と章立て

以下、全5章に及ぶ章のタイトルを紹介しておきたい。これを見れば本書の内容は大体、想像が付くだろう。
序章・対米自立のチャンスがやってきた
第一章・新時代の日本の国防~アメリカの保育器から解放された時
第二章・外交は大丈夫か~情報を持たない日本がとるべき道
第三章・これがトランプ政権だ
第四章・アメリカン・ドリームが復活する
第五章・日本経済のゆくえ~環太平洋共栄圏は実現するか
あとがき~日本は、アメリカと対等な関係になれるか

第一章では一般の予想に反して、在日米軍は撤退せず、日米安保体制は寧ろ強化されることを予想している。勿論、トランプ政権は日本に国防費の増大と米軍駐留経費のさらなる負担を求めてくる。しかし、チャイナの脅威を受けて立ち、これを叩き伏せて覇権国の地位を守る為には、アメリカは絶対的に日本の協力を必要としている。費用負担の問題はともかく、トランプは日米安保体制の強化を意図しているのだ。

第二章では、軍事的に小国であるばかりでなく、情報面でも全く無力な日本外交の実態を暴いている。軍事力で劣勢ならば、せめて情報面で他国を上回る力を持ちたいところだが、日本は情報戦でも全くの敗者である。そもそも日米戦争でも日本は情報戦で負けていたのだ。物量戦の前に、情報戦で負けていたのである。日本にも、対外情報機関が絶対に必要であるが、前途遼遠である。

第三章では、詳細にトランプ政権の主要人事を分析している。
レックス・ティラーソン国務長官は世界最大のエネルギー企業エクソン・モービルのCEOであった。ジェームズ・マティス国防長官は退役海兵隊大将であり、中東における戦争の経験者である。マイケル・フリン安全保障問題担当大統領補佐官は、退役陸軍中将で、やはり中東戦争の経験者である。ここら辺の顔ぶれを見ると、如何にも大物内閣といった風情が伝わってくる。一言で言えば、オバマ政権は大統領が小粒の人物であったばかりでなく、閣僚達も全くの小物政治家ばかりであった。
これに比べるとトランプ内閣は、大物内閣である。親分風の風格をもった人物がズラリと並んでいる。みんな、貌が恐い。イデオロギーの右・左やタカ派・ハト派という以前に、トランプの閣僚達は皆、大物なのである。皆、一国一城の主の風格である。
比較的小物風なのが、スティーブン・ムニューチン財務長官だが、彼はゴールドマン・サックス社の出身で、ウォールストリートからトランプ政権に送り込まれた連絡係である。小物なのはやむを得ない。

第四章では、トランプが実現しようとする経済政策について論じている。アメリカの中産階級を復活させること。その為には、アメリカ国内で給料水準の高い良質の雇用を多数、生み出すこと。これがトランプ政権の眼目である。その為には堂々と保護主義政策も実行してゆくことになる。これが自由貿易一辺倒だった今までのアメリカの経済政策との大きな違いである。形式的な自由貿易の推進は、結局、多国籍企業・無国籍企業の利益にしかならなかったのである。これが過去30年間から40年を振り返っての、アメリカ国民の反省である。これからは公正貿易が世界貿易の大原則となり、形式的な自由貿易は最早、通商政策の原則とはなり得ないのだ。

第5章は、アメリカの経済政策の大転換を受けて、日本がどのように対応すべきかを、具体的に論じている。国内投資を活発化し、日本の内需主導型の成長を惹起することが何よりも重要だ。そして日本の自主国防力を高めなければならない。国防力強化の一つの手段として、アメリカから大量のハイテク兵器を購入する必要がある。こうすれば、アメリカの対米貿易赤字は大幅に減少し、アメリカを喜ばせる事になるので一石二鳥である。

「あとがき」では、日本は今こそアメリカと対等になる絶好のチャンスに恵まれていることを再論している。

尚、2016年のアメリカ大統領選挙で何が起きていたかを詳しく知りたければ、筆者が昨年11月下旬に上梓した『トランプ革命で復活するアメリカ 日本はどう対応すべきか』(勉誠出版)特に前半の第1部をお読み頂きたい。
『日米対等』の本では、近未来においてトランプ政権が何を行なうかということに焦点を当てているが、何故、そういった政策を行なおうとしているのかという原因を知りたいならば、是非、『トランプ革命で復活するアメリカ 日本はどう対応すべきか』を参照して頂きたい。
オバマ政権が如何にアメリカの国益を損なった政権であり、それへの反発がトランプ大統領を生み出したのだという事実が、この本から了解していただけることと思う。オバマ政権は日本で例えていえば、鳩山由紀夫政権のようなものである。日本の民主党政権は3年で終わったが、オバマ政権は2期8年続いた。アメリカの国力がどれだけ疲弊し、自虐史観が蔓延したかは、日本人にも想像が出来るだろう。鳩山政権が8年も続いたら、日本がどんな酷いことになっていたか、想像に難くない。安倍政権が「日本を取り戻す」と言っているように、トランプ政権もアメリカを取り戻そうとしているのだ。

■変化のスピードが速い

トランプ政権の行動は、迅速である。大統領就任式の日に既に3つの大統領令を発令している。大統領の行政命令で出来るものは、公約通りに次々に実行されている。これ程のスピードで公約を実行に移している政権は今まで見たことがない。このスピードの速さにはアメリカ人も驚いている。日本人の多くは恐らく、この変革の驚異的な速さについてゆけず、唖然とすることだろう。これが又、トランプに対する誤解や誹謗中傷を生むことは目に見えている。トランプはロシアと組んでのIS叩きをその戦略上のプライオリティとしている。大統領就任式の日に既に、米露共同でISの拠点に対する爆撃が行われている。大統領就任式のその当日に、である。トランプ政権の迅速さを物語る象徴的なエピソードであるといえよう。
最近の日本語の常套表現で言えば、「スピード感を重んじて実現する」ということになる。ゲームのルールは完全に変わったのである。日本も腹を据えて、この政権と付き合わないと、とんでもないダメージを受けることになるだろう。
アメリカは8年間、停滞していた。オバマはアメリカの国力を削ぐような政策ばかり行ってきた。そしてアメリカ人のプライドを奪うような政策のみを追求してきた。これからはその真逆のことが起きるのである。アメリカ人は再び自信を取り戻し、楽天的となることだろう。この速さについてゆくばかりでなく、寧ろ、トランプ政権の先取りをして、日米関係をリードしてゆくことこそが、安倍政権に求められている。
一般的に言って、アメリカは非常にドラスティックな変化が起きる社会である。しかも内発的・自発的に変革を起こす力を持っている社会である。ここが戦後の日本社会と大きく異なるところである。戦後の日本を見ると、外国からの圧力や、事件によってしか自己改革を成し得ない、受け身の国となってしまった。しかもアメリカは、変わるときは一挙に変わるという特徴がある。今日は昨日の延長線上にはなく、明日は今日の延長線上にはないのだ。日本のアメリカ専門家と称する人の多くが、この1点が全く分かっていない。根本的に認識がずれているのだ。
トランプはレーガン以上の保守革命を目指している。彼が2期8年の大統領任期を満了すれば、トランプの構想のかなりの部分は実現するだろう。アメリカは面目を一新するはずである。トランプ革命の方向性は、アメリカ革命の原点に戻ることである。言い換えれば「アメリカ憲法の精神」に戻ることである。アメリカの連邦制は元来、著しく分権的であり、連邦政府の権限は国防などの分野に限られている。これがトランプ保守革命の目指す方向性である。
如何なる国家においても、真の革新を起こそうとすれば、その国家創立の原点に戻るしかない。そうでなければ変革は基準のない、方向性のない、無秩序に陥ってしまう。オバマの「チェンジ」には、何らの回帰すべき原点も、尊重すべき座標軸も存在しなかったのである。国が真に再生しようとするならば、その原点に戻って出直すしかない。危機に陥った時ほど、国家創世の原点に戻ることが肝要である。明治維新はまさにそうであったし、我々が現在なすべき改革も、このような復古的改革でなければならない。これはアメリカに教えられるでもなく、日本人自身が気づかなければならないことなのだ。
今年、平成29年は大政奉還から丁度、150年目にあたる。
nitibei

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