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國民新聞 11月号「米中新冷戦勃発」サイバー戦争に関しての記事を寄稿
2011年11月号の國民新聞1面「國論」コーナーに、サイバー戦争に関する記事を寄稿。
タイトル: 米中新冷戦勃発 今こそ真の日米同盟を
【米中新冷戦勃発:今こそ真の日米同盟を!】
米中間で、新しい冷戦が勃発した。この米中対立の構造は、今後、相当の間、継続する趨勢である。日本は、この米中新冷戦を利用し、アメリカとの間に国防上の真の協力関係を打ちたてなければならない。現在の日米安保協力は、「同盟」とは名ばかりのお粗末なものである。何しろ、日本側が、集団自衛権すら認めていないのであるから、とても同盟とは呼べない代物である。真の同盟関係を樹立するとは、「日本が自立した国防力をもち、あくまでもそれを補う力として、アメリカとの関係を有効に利用する」ということでもある。
2009年1月に米オバマ政権がスタートした時は、その対中政策は極めて友好的なものであり、クリントン政権と極めて似通っていた。「米中G2論」を主張しており、筆者は、米中共同支配による日本への圧迫を危惧していた。正直言って、オバマ政権の4年間は、米中協力による日本封じ込めが現実になるものと予測していた。しかし、政権発足から丁度1年後の2010年1月には、この様相は大きく転換した。この月には、米中を対立に向かわせる3つの大きな事件が起きている。第一に、オバマ大統領が、台湾への武器売却を承認し、米議会に通告している。(契約自体はそれ以前に成立していた。)第二に、オバマ大統領が、チベットのダライラマ法王と会談している。第三に、米グーグル社へのシナの検閲が大問題となって浮上した。シナ共産党政府の検閲を嫌った米グーグル社は、これをキッカケに、シナ市場から撤退する事になる。この件に関しては、クリントン国務長官が、シナ共産党を鋭く糾弾している。
これら3つの事件で、米中関係は対立構造に入って来たが、これを更に決定的にしたのは2011年5月から7月に起きた諸事件であった。米中対立構造を決定的にしたのは、5月1日の米軍単独行動による、パキスタンによるビン・ラーディン殺害である。この事件により、米パキスタン関係は決定的に破綻してしまった。何故なら、パキスタン軍部がビン・ラーディンの潜伏を援助していた事が明らかとなったからである。シナとパキスタンは深い同盟関係にある。米パキスタン関係の破綻は、即ち「米中関係の破綻」をも意味する。この後、パキスタンは公然と反米親中色を益々強める事となった。パキスタン南部のグワダル港に、敢えてシナの海軍基地建設を要求したのも、米中対立構造の中でパキスタンが明確にシナ寄りの姿勢を取った事の表れである。米軍並びにCIAの幹部も「パキスタンと協力してビン・ラーディン殺害を実行しなかったのは、もし共同行動を取ろうとすれば、情報が事前に漏れていたからだ」と公然と発言している。事態の真相を深く考えれば、アメリカはパキスタンとの関係が悪化し、米中対決構造が本格化する事を覚悟の上で、パキスタン国内におけるビン・ラーディン殺害の単独行動を取ったものと推測できる。
更に6月には、ロッキード・マーチン社やグーグル社に対するサイバー攻撃が盛んに行なわれ、その発信源がシナにある事がほぼ明らかになっている。繰り返されるアメリカへのサイバー攻撃を受けて、7月に米国防総省は初めてサイバー戦争に関する米軍の戦略方針を明らかにした。その内容は、サイバー攻撃を通常兵器による攻撃と同等に見なし、それ故に、サイバー攻撃に対する報復として、通常兵器の使用も有り得る、という徹底したものである。サイバー空間(インターネットを中心とする情報空間)を陸・海・空、そして宇宙空間に次ぐ第五の作戦領域として定義付け、この作戦領域においてもアメリカは断固とした国防姿勢を堅持する事を宣言している。このサイバー戦略からすれば、明らかにサイバー空間におけるアメリカの当面の敵はシナである。シナにおいては、軍関係者のみならず、一般民間人をも動員して日米欧を含む外国へのサイバー攻撃が盛んに行なわれている。この民間人のサイバー戦争における協力者は、「サイバー・ミリシア(民兵)」と呼ばれている。
日本も又、シナのサイバー攻撃の絶好のターゲットとなっている。アメリカと異なり、サイバー攻撃に対する警戒心の薄い日本では、既に多大の被害が報告されている。2011年年初以来、三菱重工などの国防産業の機密情報がサイバー攻撃により流出していた事実が明らかになっている。又、日本の官庁のホームページの外部からの妨害は、既に度々報告されている。日本の衆議院の利用するサーバが、組織的なサイバー・アタックにあっている事実も10月下旬に明らかになっている。
しかし相変わらず、日本側のサイバー防衛に関する意識は低い。9月16日、外交・国防(2プラス2)の日米防衛協力者会議が開かれたが、日本側の危機感不足と相変わらずのセクショナリズムによる省庁間の統一のとれない対応が、危機感溢れるアメリカ側の態度と好対照であった。この席上でアメリカ側は「我々はペンタゴンのコンピュータを1日100万回もスキャンして、サイバー攻撃に備えている」と発言している。親中派議員の多い民主党政権では、先ずサイバー面における本格的な日米協力体制の実現もとても実質を備えたものとは成り得ないだろう。