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夕刊フジ連載コラム「米混迷大統領選と日本」第2回「民主党も共和党も分裂の危機」
7月29日の夕刊フジ、そしてインターネット版ZAKZAK8月1日号に、藤井厳喜のアメリカ大統領ウォッチングの連載記事【米混迷大統領選と日本】第2回目が連載されました。
【米混迷大統領選と日本】民主党も共和党も分裂の危機
2012年の米大統領選で政権奪回を目指す共和党では、複数候補が乱立し、混戦状態だ。
現在、共和党のトップランナーは、ロムニー元マサチューセッツ州知事である。他の有力候補は、ポーレンティー元ミネソタ州知事。ニュート・ギングリッチ元下院議長。ハンツマン元ユタ州知事(元中国大使でもあり極端な親中派)など。
そして、ティーパーティー派(草の根保守派)からは、ミシェル・バックマン下院議員と、ベテランのロン・ポール下院議員の2人。以前、人気のあったサラ・ペイリン前アラスカ州知事(08年の共和党副大統領候補)は失言やメールが暴露されて、いまだ立候補宣言はしていない。
経済状況が好転せず、オバマ大統領の再選の可能性が必ずしも高くないなか、共和党候補者らの意見は鋭く対立している。焦点は「多国籍企業=大企業の利益」を重視するのか、「中小零細企業=草の根保守の利益」を重視するのかだ。
共和党はこれまで「ビジネスの党」と呼ばれ、大企業の利益も、中小零細企業の利益も擁護してきた。ところが、ウォール街の大銀行の救済やTPP問題、政府財政赤字上限引き上げ問題、新国際会計基準(IFRS)問題(スモールビジネスは反対)などで、修復のしようがないほどの亀裂が広がっている。
ロムニー氏やポーレンティー氏は党内体制派で、レーガン時代の古いレトリックを繰り返している。
一方、ポール氏は財政赤字上限引き上げに反対し、「米国のデフォルトやむなし」「TPP絶対反対」「ウィキリークス支持」「財政赤字削減のための海外米軍基地全廃」などのドラスチックな政策転換を掲げる。
ポール氏は「小さな政府」を主張するリバタリアンというグループに属する。バックマン女史も同様の傾向。現在の支持率は低いが、支持者らは熱狂的な盛り上がりを見せている。彼らが共和党の指名候補になれなければ、共和党が分裂する可能性は大いにある。
もし、彼らが大統領になれば、米国はデフォルトし、日本の米軍基地は全廃される。ドルは世界の基軸通貨の地位を降りることになる。世界秩序は大混乱に陥るだろう。日本はこの衝撃に耐えられるだろうか?
実は、民主党内にも「多国籍ビッグビジネス重視」か「国内スモールビジネス重視」かの路線対立が先鋭化している。オバマ大統領はビッグビジネス重視に傾いており、民主党内左派はこれに鋭く反発している。民主党も分裂の危機を内包しているのだ。(国際政治学者・藤井厳喜)