講演・公的スピーチ(2008年3月以降) | パブリシティ
第25回 呉竹会アジアフォーラムにて、台湾最新情勢を語る
2009年4月24日、第25回 呉竹会アジアフォーラムにて、台湾最新情勢を語る。
産経新聞・元台北支局長、長谷川周人氏、をゲストに日本プレスセンター 10階ホールで開かれた。
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前半(第一部)は、長谷川さんが3年間滞在された、台湾の最新政治情勢について語り、
後半は司会の花岡信昭さんと私が加わって、(座談会形式で)話を展開した。
長谷川さんの話で面白かったのは、
昨年の総統選挙で馬英九候補が如何に巧みに一般台湾人の心をつかんだか?という、具体的な実話エピソードであった。
香港生まれで、純然たるシナ人である馬英九が独立志向の強い台湾人を如何に巧みに欺いたか?、そのテクニックには実に驚くべきもの、考えさせられるものがある。
馬英九は究極的には、中華人民共和国との統一を志向しながらも、その事は一切、表に出さず、
あくまで現状維持(事実上の独立の継続)を訴えながら、巧みに台湾人の心を掴み、選挙では史上最大の圧勝を勝ち取った。
経済不況に苦しむ一般台湾人に、経済繁栄の為には、大陸との経済統合が不可欠である、と訴えた。
そして、自分が総統になれば、事実上の独立を維持しながら、大陸との交流を拡大し、経済的繁栄を達成できると訴えた。
経済交流がやがて経済統合に進めば、政治的独立も失われるのは目に見えている。
しかし、多くの台湾人はこの馬英九の巧みな話術にすっかり欺かれてしまったようだった。
そして、大陸から来た外省人色を消すために馬英九も巧みに選挙戦術を展開した。
その最たるものが、独立色の強い台湾南部における「ロング・ステイ計画」であった。
これは、馬候補自身が、一般台湾人の家庭に宿泊しながら、選挙民と直接対話の交流を深めるものである。
これは功を奏し国民党に反感の強い台湾南部でも馬候補はかなりの票を獲得することが出来た。
「経済繁栄という人参」をぶら下げられてかなりの台湾人の独立志向が、揺らいでしまったというのであれば、まことに情けない話だと思う。
しかしこれは、何もお隣の台湾の話だけではない。
今日、ただいまの日本でも、不況からの脱出の出口を、「比較的好調である」と報道されるシナ経済に求めようという輩は数多く存在している。
また、そのような傾向を煽る論調も、マスコミに散見される。全く他人事ではないという感じである。
ともかくも、本音を隠しての馬英九の巧みな選挙戦術の話が私には非常に興味深かった。
どんなに正しい政策であっても、動揺しがちな大衆の心を掴み、それを正しい方向に導くテクニックがなくては、真のリーダーシップは発揮できない。
大衆といわれる人々とコミュニケートする技術が無くては、どんなに高い理想も実現から遠ざかるばかりである。
馬英九の選挙戦術からは反面教師としてそんなことを学んだ。
それは、日本の真の独立を目指す我々自身が他山の石としなければならない教訓であろう。
第二部の座談会、『(演題;) 最新の台湾情勢と日台・台中外交』では、
私の方から、3月17日、18日の両日にわたってアメリカの国防総省で実施されたという経済戦争シュミレーションについて言及した。
アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、シナ、それ以外のアジアの5つのチームが、軍事力、経済力を競い合う「ウォー・ゲーム」の形式のシュミレーションであったが、最終的に勝利したのは、シナ・チームであったと伝えられる。
シナ・チームは国際金融市場で、ドルを放出する戦略で、アメリカ・チームに圧迫を加え、相対的に優位な立場を築き、ゲームに勝利した。
ゲームとはいいながら、こういったシュミレーションは、極めて現実的な条件の下に行われる一種の思考実験であり、この結果は極めて衝撃的であると思う。
そして、このような現実に対する見通しから、ブレジンスキーの唱える「チメリカ構想」が生まれてくるのであろう。
「チメリカ」とは、チャイナとアメリカを、一体化し、世界の覇権の中心としようという構想である。
アメリカからいえば、シナとの関係を強化し、シナをあらゆる面において、最重要のパートナーとすることによってアメリカの覇権を維持していこうという戦略である。
ブレジンスキーは、カーター大統領の国家安全保障担当補佐官で、現在もアメリカの政界、特に民主党においては大きな影響力をもつオピニオン・メーカーである。
高齢ながら、キッシンジャー同様に今も活発に、活躍している。
元来が、民主党系の学者なので、特にオバマ政権への影響力に関しては、無視しがたいものがある。
私は、以上のような点を指摘して、米中関係がもし、「チメリカ構想」の方向に大きく転換すれば、台湾の国際的立場も極めて危うくなることを指摘した。
アメリカは外交政策を転換するときは、まことに大胆にそれを行う国である。
台湾独立派の人々も我々も、その点を忘れてはいけないだろう。
長谷川さんも、この点については私と同意見のようであった。
司会の花岡さんも、世界一の親日国家台湾がいつの間にか消滅してしまうという危険性について、最後に言及された。
最後に、呉竹会の頭山興助会長の挨拶があり、
「よく知っていたつもりの台湾ではあるが、実は思いもよらないような変化も起きていることに目をひらかれた」とのコメントがあった。
台湾を熟知される方の感想だけに、大変、重みのある言葉であった。
また、NHKテレビ番組『JAPANデビュー』という台湾に関する偏向報道に関しては、私の発言の冒頭で、NHKに対する批判を述べた。
この番組で大きな役割を演じた柯徳三(か・とくぞう)医師とは私は3回は確実にお会いしていると思う。
大変温厚な方で、決して反日的な人ではない。
ご本人自身、日本を批判した部分だけが報道されて、甚だ不本意であると発言されている。
(国民新聞のインタビュー)
この点については、NHKの報道の酷さについては、長谷川さんも、花岡さんも同様の感想を表明されていた。