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超大恐慌の時代

  • 日本文芸社
  • 1680円
288ページ
出版社: 日本文芸社(2011/6/24)
ISBN-10: 4537258357
ISBN-13: 978-4537258356
発売日: 2011/6/24

東日本大震災が襲う前、日本では、世界経済はなんとか2008年のリーマンショックから立ち直りつつあり、あの当時言われていた「100年に一度の大不況」「第二次世界大恐慌」は回避されたような見方が主流であった。
ただ、2011年の年初からドミノ式に北アフリカから中東にかけての動乱が起こり、原油価格が高騰したため、「なんとなくおかしい」というムードもあったが、リーマンショックのときに顕在化した問題は、おおむね解消したかのような報道が日本でも、世界でも続いていた。

 しかし、現実はそうではない。
今後、世界経済は確実に「二番底」(Double Dip)に向かっていく。
それにともない、わが国の経済もさらに低迷を続け、大震災の後遺症から立ち直れないばかりか、場合によってはクラッシュしてしまうような状況も考えられる。

 本書では、震災不況にあえぐ日本の根本的な諸問題から、日本からは見えてこない深刻な経済危機にあるアメリカ、スペイン破綻に端を発する世界恐慌の可能性、終わりへの始まりにも思える中国経済のバブル崩壊の予兆、大混乱に陥った中東問題など、著者独自の視点で論及。

 私たちが生きる未来の過酷な現実をあぶりだしながら、望ましくはないが、極めて確率の高い、世界経済が破産へ向かう恐怖のシナリオを活写する。



 著者の立場からアピールしたい本書のポイントは、主に3つあります。

1)米欧中、いずれも経済は二番底に向かいつつあります。いずれの地域もかつて経験したバブルを清算しなければならない時期にあります。

 アメリカではオバマ政権が第二次ITブームを仕掛けていますが、米の実体経済が、急速に復活する見込みは殆どありません。

2)ただでさえデフレ不況にある日本経済を襲ったのが、3・11ショックでした。それ故に、日本経済は過酷な状況にあります。しかし民主党政権は、的確な景気拡大策を取らないばかりではなく、やってはならない増税までやろうとしています。このままでは日本のGDPはさらにシュリンクし、デフレ不況はいっそう深い二番底へ落ち込むことになってしまいます。米欧中とも、不況期に入っているので、日本経済がかつてのように輸出をエンジンとして復活する道は閉ざされています。

3)世界経済は単に同時不況に向かっているだけではありません。経済を支えてきた政治秩序が大きく揺らぎ、世界は不安定な多極化の方向に向かいつつあります。一歩、つっこんで言えば、「世界の無秩序化」と言ってもよいでしょう。本書の第3章では、2011年になって、中東で起きた大騒乱を分析しています。

 ここで表れてくる現実を図式化すれば、

 【facebook × Twitter × Wikileaks = Chaos(秩序崩壊)】

ということになります。

 それは、また

 【無制限 × 超高速 × 同時多発的 = 無秩序の拡散】

を意味します。

 このような状況は、発展途上国ばかりではなく、先進国をも襲いつつあります。

 真面目に日本の近未来を考える人々には、是非、真っ向から取り組んで頂きたい本です。少々、悲観的すぎるとの御批判もあろうかと思いますが、厳しい現実を直視するところからしか、明るい未来は生まれてこないというのが、私の核心でもあります。

 復興や再建を呪文のように唱えるだけでは、復興や再建は叶いません。被災地で苦労されている方々を批判しているのではありません。被災地の方々の悲壮な努力を支える正しい経済政策が実行されなければならないのに、民主党政権が全く逆方向の日本経済を悪化させる経済政策を行なっていることを批判しているのです。

 アメリカ経済の現実の姿と、日本ではあまり取上げる事の少ない欧州経済危機の本質についても、図表等を多く用いて、分かりやすく解説してあります。著者としては、かなり苦労した力作です。現実を直視する勇気と知性をもつ貴方に是非、読んで頂きたい本です。

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