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今回が経済講座の最終回になります。
藤井厳喜アカデミーの第1弾は「国民の為の政治学」でした。
アカデミー第2弾の講座名は「日本を復活させる智恵(経済篇)」となっていますが、内容は「国民の為の経済学」と呼んでもよいものです。
通貨、市場、資本主義、デフレギャップ、等という本質的なことについて、深く考えてみました。
普通の経済学の本には書いていないような内容です。
しかしこれらの考え方がよく理解できれば、現在私たちがどのような経済政策をとればよいのかということも明らかになります。
学問というのは、面白いもので、より原理的な原則的な理解が深まれば、「現在、何をしなければならないか」という実践的な面でも、より現実的なよい智恵が湧いてきます。
世に一般に流通しているレベルの低い「常識」に洗脳されている内は、明確にものを考えることができません。
明確にものを考えることが出来なければ、正しい問題解決の方法を見つけることもできません。
少々、難しい言い方になるかもしれませんが、学問で大事なのは、「区別」と「関係」です。
この事を念頭において、この国民の為の経済学講座を勉強して頂ければ学ぶところは多いと思います。
分からなければ、是非、繰り返し、ご覧になってください。
※ 藤井厳喜アカデミー第2弾・全篇通しての復習は、以下の再生リストをご利用ください。
【アカデミー第2弾・経済篇・全篇再生リスト】 http://www.youtube.com/playlist?list=PLE4F42E64ED2C36F7&feature=mh_lolz
皆さまからの質問、ご意見等をお待ちしております。
藤井厳喜アカデミー第2弾4講「経済常識」の非常識!? 前篇[H23/7/22]
YouTube : http://youtu.be/guZoMztMOC4
ニコニコ動画: http://www.nicovideo.jp/watch/sm15091413
前篇《要点1:デフレギャップと需給ギャップの違いについて》
「デフレ・ギャップ」は、国民経済における潜在的な供給力と現実の需要の差(ギャップ)のことです。
これに対して「需給ギャップ」というのは、企業の生みだす製品と社会の欲している商品が、合致しないことです。
つまり、供給側と需要側の内容にギャップがあることです。
デフレギャップと需給ギャップは、全く別の概念ですので、その違いに注意してください。
今日の日本経済には厖大なデフレギャップは存在しますが、需給ギャップは存在しません。
《要点2: 正統派ケインズ主義と俗流ケインズ主義の違いについて》
このテーマについて、多くの方から質問を頂いたので、もう一度、詳しく説明します。
正統派ケインズ主義の意味するところは、一国の経済における需要と供給の調整です。
需要と供給を調整し、経済を持続的に発展させようというのがケインズ主義の本来の考え方です。
これに反して、「俗流ケインズ主義」は、増税して「大きな政府」を作り、国債発行で景気対策を行なうが、これが将来における増税に帰結してしまうような経済政策のことです。
「俗流ケインズ主義」は、イコール「大きな政府」であり、この場合「大きな政府」が意味するのは、
1)公務員の増大、2)増税、3)国債乱発(これが将来の増税に再び繋がる) 4)政府規制の強化です。
今日におけるケインズ経済学批判と言われているものは、実はこの「俗流ケインズ主義」に対する批判にすぎません。
《要点3: 国債は増やしても大丈夫》
国債が国内で消化されている限り、マクロ経済学的に見れば、国債の増発を恐れる理由はありません。
ある時点で、国債を全て償還しなければいけないとします。
つまり国家政府の借金を全て返さなければいけないと仮定します。
この場合、財源は増税しかありません。
国民に増税の負担をしてもらって、政府の借金を返すほかに方法はありません。
政府は誰に対して借金を返済するのでしょうか?
借金を返してもらうのもまた、国民です。
つまり、国債の償還(政府の借金の返済)とは、国民からお金を取って、国民から増税という形でお金を集めて、それを国民に返済するということに過ぎません。
お金の流れは、国民→政府→国民ということになります。
国民が支払う増税分は、再び国民のお財布の中に戻って来るのです。
ですから、国民経済全体としてみれば、国債の増加は、全く困った問題ではないのです。
奇妙に思われるかもしれませんが、借金を返済してもらうのもまた国民であるということが分かれば、以上の説明に納得して頂けると思います。
問題は、初めに国債を増発して支出した政府予算が誰の為に使われたかということです。
政府の支出は、全体として国民の収入になっているのですから、これもまた問題はありません。
しかし政府支出の内容が、ある部門に偏っていたとすれば、民間経済のそのセクターのみが優遇されたことになります。
例えば政府がダムや高速道路ばかり作っていれば、建設会社や土木会社のみが直接の受益者となります。
その他の経済部門の人々は、直接の利益を被りません。(間接的には、利益は社会を循環しますが)
そこに不公平感が生まれるのは確かです。
また、国債の変換の際にも若干の不公平が発生します。国債を所有していた国民は、元本の他に利息を受け取りますから、得をします。
これに対して国債を持っていなかった国民は、増税の負担だけを強いられて、利息はもらえませんから、損をします。
ここにも不公平感は生じます。
以上の様な不公平感を如何に調整するかは、議会制デモクラシーに任された使命です。
《要点4: 資本主義の集中原理と拡散原理》
資本主義とは、資本が自己増殖してゆくような経済システムのことです。
この資本主義という仕組みには、「拡散原理」と「集中原理」の2つの原理が存在します。
よく、資本主義は、金持ちが益々、金持ちになるような経済システムであると批判されます。
これが意味するのは「資本の集中原理」です。
資本は、繰り返し投資されて、増殖してゆきますから、お金もちが益々お金もちになる、という傾向は確かに存在します。
例えば、マルクス主義者を始めとする社会主義者や共産主義者達は、この点のみをあげつらって、資本主義を攻撃しました。
しかし、資本主義には、全く異なった一面も存在します。それが資本の拡散原理です。
資本は自己増殖する為には、投資されなければなりません。
投資されるということは、資本が常に新しいビジネス分野に向かって「拡散」してゆくということです。
新しい産業分野に資本が投資されることによって、その分野で新しい技術革新を促し、新たなる雇用を生み、新たなる経済成長を引き起こします。
若くてやる気のある起業家や技術者に、ビジネスを起こす機会を与えられるのは、資本主義にこの拡散原理が存在するからです。
また、資本は国境を越えて、低開発地域にも流入し、その地域における経済発展を促します。
その地域における新しい雇用を作り、貧困を改善し、経済発展を実現します。
このように資本の拡散原理には、社会の均衡ある発展を促進するというプラスの側面が存在します。
資本主義を単に、集中原理の視点のみから批判するのではなく、拡散原理の視点からポジティブに評価することも必要です。
藤井厳喜アカデミー第2弾4講「経済常識」の非常識!? 後篇[H23/7/22]
YouTube : http://youtu.be/guZoMztMOC4
ニコニコ動画: http://www.nicovideo.jp/watch/sm15092252
《後篇:成功した「民間通貨」という実験》
※ 今回の講義の中で御紹介しましたエピソードを更に詳しく学ばれたい方は、私が以前に書きました『劣化列島 日本
』の第5章を御参照ください。
世界大恐慌に襲われていた戦前のドイツとオーストリアで、民間通貨が発行され、大不況を一掃することが出来たという歴史のエピソードを紹介します。
話はシルビオ・ゲゼル(1862 - 1930)というドイツで生まれ、アルゼンチンに渡った実業家、兼・経済学者の理論から始まります。
ゲゼルは本来あるべき通貨はどういうものが望ましいか、と深く考えた結果、「老化(劣化)するお金」という結論に達しました。
お金が人間を支配してしまうのは何故か。
それはモノは劣化するのにお金は劣化しない、だから誰もモノよりもお金を好むことになる。
そこからお金と人間の逆転現象が生まれてきます。
本来、人間の交換の道具であるはずのお金が主人公になり、人間を支配するような逆転現象が生まれて来るのです。
あらゆる商品は時が経つにつれて質が悪くなってゆきます。
これは、工業製品に関しても食料品に関しても同じことです。
日常生活に必要なモノは必ず時間と共に老化して、その価値を徐々に失ってゆきます。
そこで、通貨もそれと同様に、劣化するのが正しい在り方なのだ、とゲゼルは考えました。
例えば、今10万円の価値のある通過が、来月は9万円の価値しかなく、更に2カ月後は8万円の価値しかないというような、時間と共に老化してゆくお金を作ればいいと考えたのです。
そうすると、そのお金は今直ぐ使った方が得ですから、確実で迅速な交換を促します。
つまり、お金をため込むということは少なくなり、お金が社会に出まわって流通するので、景気をよくすることが出来ます。
このゲゼルの考え方が、1929年、ドイツの現実のモノとなり、「ヴェーラ」という自由通貨の発行が始まりました。
1929年10月というと、あの世界大恐慌がニューヨークの証券取引上から起き、世界に大衝撃を与えた時です。
ヴェーラは瞬く間にドイツ中に普及し、2年間で1000社以上の企業がヴェーラ交換組合に加入しました。
加入企業はドイツの全ての地域に分布し、加入企業の職種も多様でした。
やがて町ぐるみでこのヴェーラを採用するところも出てきました。
それはドイツのバイエルン地方の炭鉱町、シュヴァーネンキルヘンという町でした。
ヴェーラの流通によって、この町は不況を脱することができました。
ヴェーラは、ドイツ中で、沈滞した経済活動を再活発化することに、非常に効果がありました。
しかし、ドイツの中央銀行は、ヴェーラの流通拡大に危機感を覚え、1931年11月にヴェーラを禁止してしまいました。
しかし、1932年、オーストリアのチロル地方のヴェルグルという町で、ヴェーラによく似た「労働証明書」という劣化する通貨が発行され、やはり、この町の経済活性化に成功しました。
以上のようなエピソードを紹介したのは、通貨というものに対する固定した旧い観念を皆さんに一掃して欲しいからです。
通貨は中央銀行のみが独占的に発行するだけではありません。
中央銀行が発行する通貨のみが、唯一正統なものではないのです。
国民は、自ら通貨を発行することも出来ます。
個人小切手などは、通貨の一種と見なすことも出来ます。
地域通貨というものが、あってもおかしくはないのです。
通貨は所詮、商品を交換する道具に過ぎません。
通貨自体に価値があるわけではないのです。
道具として考えれば、その発行は、景気を良くするための、方法に過ぎませんから、柔軟に考えるべきということになります。
このように考えて来ると、政府の通貨発行権の話も、軟らかい頭で受け入れやすくなります。
ヴェーラのエピソードを通じて私が言いたいのは、現在の日本では、政府の通貨発行権を用いた経済活性化が可能であるということです。
ヴェーラのような民間発行通貨ですら、経済活性化に有効だったのですから、もっと大きな信用のある政府の通貨発行権を活用すれば、景気の活性化は更に簡単なはずです。
原理的に言うならば、私たち1人1人に、その信用に見合った通貨発行権が与えられています。
この個人の通貨発行権は、乱用されると社会の混乱をもたらしますから、これを一時的に国家に預けた形にしてあるのが、現在の管理通貨制度です。
日本では、日本銀行と中央政府にのみ、通貨発行権があるのはこのためです。
しかし、これらの通貨発行権は、もともと国民に与えられた権利であり、それを二つの国家機関が代行しているに過ぎません。
通貨発行権は、天下り的に日銀が独占しているものであってはいけないのです。
通貨発行権は、国家が国民の幸福の為に、経済成長の為に、積極的に活用しなければならない権利です。
なぜならそれは、国民から国家に付託されたものだからです。
これは、「国防権」イコール「武装権」と並行して考えることができます。
我々1人1人に、自己防衛=正当防衛の権利があります。
原則的に言えば、個人は武装して自らの安全を守る権利があります。
しかしこれが乱用されると、社会が混乱しますから、これを国家に預けることによって、警察や軍隊の武装権が成立するのです。
ですから、民主国家においては、警察や軍隊の武力は、国民の安全を守り法秩序を維持するためにのみ、発動することが許されます。
国家の通貨発行権についても、同様のことが出来るのです。
↑ 藤井厳喜、次回作です!8月6日発売予定のAmericaウォッチング本です!!
【藤井厳喜アカデミー関係動画・復習用の動画再生リストが出来ました】
■ 再生リスト【第1弾・藤井厳喜アカデミー国民の為の政治学講座・全篇】
http://www.youtube.com/watch?v?=zn5eCTbgHxc&list=PL72D9C8776C?E15846
2010年2月1日開校のガイダンスから全12回講義、補講までの全講座をまとめました。
■ 再生リスト2 【近現代世界の国際秩序の変遷:新しい世界史】
http://www.youtube.com/playlis?t?list=PLE25877D424835D45
こちらは、2010年1月20日の藤井厳喜・講演会で「近現代世界の国際秩序の変遷」について
語ったものを、改めてリストにまとめてみました。
この日、私が伝えたかった事は、歴史的な時系列を振り返り、日本が大局的に言って、
国際関係のどのようなポジションにいるかという事です。
米ソ冷戦後の世界にの権力構造がどのようなものになるか、という点を大胆な仮説も含めて、語らせてもらいました。
ここで取り上げる動画は限られた時間の講演の中の一部の内容ですが、大学で私の『国際関係論』や『新しい世界史』の授業を受講される方のご参考にもなればと思い、取り上げます。
■ 再生リスト3 【第2弾・藤井厳喜アカデミー 経済篇(随時更新)】
http://www.youtube.com/my_playlists?p=E4F42E64ED2C36F7
随時、更新してゆきます。
↑ 6月24日・いよいよ新刊発売決定!!
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《お知らせ:藤井厳喜・新刊 6月24日、いよいよ発売 》
『超大恐慌の時代
』 藤井厳喜・著 (日本文芸社)
大変、好評につき、発売、忽ち、増刷が決定いたしました!!
ご支援、誠に有難うございます。既に一部、品切れとなっているお店もあるようですが、随時、搬入されるとのことですので、是非、ご注文ください。宜しくお願いいたします。
世界経済を冷静に観察すると、日米欧中、みな揃って、景気が下降していることが分かります。特に日本においては、日本銀行と民主党政権がデタラメな経済政策を実行しているので、このままでは二番底に陥ることは確実です。
3・11の東日本大震災と、福島原発事故は、事態を更に悪化させてしまいました。
リアルに世界経済の現状を分析した本ですが、勿論、日本が最後のババを引かない為にどうしたらよいのかの対応策についても論じています。分かりやすく、図表もたくさん入れてありますので、経済が苦手という方も是非、手にとって、読んでみて下さい。
2011年に入ってからの中東騒乱も含む、最新情勢までカバーしてあります。
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『 三つの小さな物語 』
厳喜
(一) 詩集の中に棲みついた風
西風はふるえながら、そよいで来て
青い窓の外で、立ち止まり
私の本棚に棲みついてしまった。
風は
フランシス・ジャムの詩集が
気に入ったらしく、その中に
眠っていることが多い。
今も、時々その詩集を開くと
風は
私の顔を(そよそよと)
優しいそよ風になって
吹いてくれる。
(二) 小川の中を泳ぐ影
小川の真中に、すらりと立った少女は
細長い自分の影を、せせらぎに
涼しげに泳がせていた。
気持ちよくなり過ぎたのか
影は、少女の体を離れて
小川の中を、あちこちに
スイスイと泳ぎ始めた。
彼女は、川岸の緑の草に座わって
にぎやかに笑いながら
影が戻って来るまで
待っていた。
(三) 地上に落ちたお星様
昼の日中(ひなか)、私が気分よく散歩していると
一つの星が空から降ってきて
私の前にコトリと落ちた。
奇妙なことだと、事情を聞いてみると
お星様は、虹が余り美し過ぎたので
近くに寄って見ているうちに
天の欄干から滑り落ちたのだそうだ。
私は、かなり重症のお星様を
家につれて戻り、鳥籠に入れて
丁重に看病した。
やがて、健康になったお星様は
ある夜、ロケットのように
元気よく
銀河の空へ
帰って行った。
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↑ 3番目の詩に添えたデオダ・ド・セヴラックのピアノ曲集です。
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』(日本文芸社・刊)6月24日、いよいよ発売 】
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今回の講義のテーマは、「資本主義経済のしくみ」の根幹の解明です。
「資本主義とは何か」、「どういう仕組みで動いているのか」、というお話をします。
そして、「市場とは何か?」という、これもまた、資本主義の根幹に関わった話をします。
今回の講座は、2009(平成21)年2月18日に、『さらに!どんと来い大恐慌』という、『ドンと来い!大恐慌 (ジョルダンブックス)
』の関連商品であるDVD教材用に収録された講義の中から一部を、無料にて公開させていただくものです。
難しい内容のように思われるかもしれませんが、分かりやすく解説しましたので、是非、ご覧ください。
分からない点がありましたら、繰り返し、ご覧いただければと思います。
【藤井厳喜アカデミー第2弾】シリーズ《日本を復活させる智恵─増税を許すな!復興財源はこうして創れ!》
第3講 前篇 「経済のしくみを考える(1) 資本主義のカラクリとは?」
YouTube : http://youtu.be/WPG3G7FGKXM
ニコニコ動画: http://www.nicovideo.jp/watch/sm15024000
資本主義のしくみは何か。
(1) 資本主義の宿命としての過剰生産
資本主義という経済制度は、あまりに生産性を上げ過ぎて、過剰生産となる傾向にあります。
過剰生産は、即ちモノが売れない事ですから、これが資本主義の「不況」を生み出す原因となります。
不況が極端に進化した場合を「恐慌」といいます。
マルクス主義の開祖であるマルクスも、ケインズ経済学の開祖であるケインズも、共に資本主義の構造的な宿命をこの過剰生産に見ています。
マルクスは、資本主義が過剰生産を引き起こし、必然的に崩壊すると予言しました。
ケインズは逆に、過剰生産に陥りがちな資本主義を救うためには、社会の中に人為的に需要を生み出すことが重要であると考えました。
ケインズの思想の流れは、「修正資本主義」として、第二次世界大戦後、経済学の主流となっていました。
しかし、ケインズ主義は誤解され、増税と規制強化による「大きな政府」を意味する言葉となってしまいました。
これに対する反発が、アメリカではレーガン主義、イギリスではサッチャー主義となって現れました。
ケインズ経済学攻撃の中心となったのは、アメリカのシカゴ大学のミルトン・フリードマン教授でした。
(2) 資本の自己増殖
資本主義とは、資本が常に増殖してゆく過程を意味します。
増殖する為には、投資しなければなりません。
という事は、常に新しい投資機会を求めているという事になります。
1970年代後半くらいから、顕著になってきた傾向が2つあります。
それは資本主義の発展の方向、言い換えれば「投資」の方向について、2つの大きな流れが存在してきた事です。
第一は、先進国内におけるサービス経済化の進展。
第二は、開発途上国(第3世界)における経済発展の方向です。
つまり、製造業の先進国における発展は、徐々に行き詰まりを見せ、先進国内においては、第三次産業であるサービス経済の拡大が主な成長のエンジンとなってきました。
このサービス経済の中で最も大きな比重を占めるのが金融サービス業です。
IT産業の発展というのも、主にこのサービス経済の発展の文脈で考える事が出来ます。
確かにIT産業は成長産業ではありますが、先進国全体の経済を引っ張る景気の牽引車としての力は期待されたほど強くはありませんでした。
サービス経済、特に金融サービス業の発展に引っ張られて、IT産業も成長を遂げることができました。
低開発国への投資も大きな成長の流れを形成してきました。
しかし、低開発国は社会全体の近代的な法整備も遅れ、国家の政治も不安定であり、常に投資にはカントリー・リスクが伴ってきました。
1982年のメキシコ以来、途上国のディフォールトは度々繰り返されてきました。
それでも、途上国への投資が止まらないのは、リスクがあるのは分かっていても、そこに非常に大きな投資機会が拡がっているからです。
まとめてみるならば、先進国資本主義の2つの経済成長のエンジンであるサービス経済化も第三世界への投資も、共に、大きな限界を抱えており、先進資本主義国の経済を牽引するエンジンとしては、不十分であった事が分かります。
それゆえに、現在、先進国は軒並み、大きな問題を抱えているのです。
(3) 金利の話
資本主義社会では、誰もが借金をしています。
一番大事なのは、企業がスタートする時に、大きな借金を抱えてビジネスを始めることです。
資本という形の借金か、社債という形の借金かはともかく、他人の資本を利用して、企業はスタートします。
それに常に資本を回転させて、利潤を上げ、資本家にお金を返してゆかなければなりません。
それは配当の形をとる事もあれば、金利の形をとる事もあります。
経済が順調に成長している時は、資本の回転はうまくいきます。
しかし、デフレで不況になると、企業は金詰まりとなり倒産してしまいます。
社会の需要が停滞し、デフレが起きるとはどういうことでしょうか?
「デフレ」とは、モノが過剰生産になり、モノの値段が下がってゆく事です。
モノの値段が下がるとは、別の言い方をすれば「お金の価値が上がる」という事になります。
お金の価値が上がるのですから、借金している人なり企業は、借金の返済が難しくなってきます。
企業でいえば、モノが売れず、お金が入ってきませんから、当然、借金の返済が滞ってきます。
ですから、資本主義社会においては、デフレによる不況の方が、インフレよりもはるかに大きな問題なのです。
藤井厳喜アカデミー第2弾3講 経済のしくみ(2)市場とは何か?[H23/7/15]
第3講 後篇「経済のしくみを考える(2) 市場とは?」
YouTube : http://youtu.be/JakiADprN0o
ニコニコ動画 : http://www.nicovideo.jp/watch/sm15023706
(4) 資本主義崩壊のパターン
資本主義崩壊のパターンは、2つあります。
第一は「デフレ的崩壊」であり、言い方を変えれば「信用崩壊:Credit Collapse 」です。
第二の崩壊のパターンは「インフレ的崩壊」であり、言い方を変えれば「通貨崩壊:Currancy Collapse 」です。
デフレが極端になってくると、前の講でも述べたように、「金詰まり現象」となり、借金が返せなくなります。
つまり、信用(Credit)が崩壊してしまいます。
これが資本主義恐慌の古典的パターンです。
生産過剰がデフレ不況を呼び起こし、借金の返済が不可能になり、企業が連鎖倒産するパターンです。
資本主義崩壊の第二のパターンは、インフレによる崩壊です。
生産が少ないのに、通貨のみが膨張し、ハイパーインフレが起きた時がこのパターンにあたります。
第一次大戦後のドイツが典型的なこのパターンです。
ハイパーインフレは、つまり、通貨の価値が激減することですから、通貨崩壊(Currancy Collapse)による資本主義の崩壊といえます。
前で述べたように、資本主義社会としては、緩やかなインフレは寧ろ望ましいのですが、インフレが行き過ぎて通貨が完全に信用を失うところまでいってしまうと、商業取引自体が成立しなくなり、経済が崩壊してしまいます。
(5) 市場とは何か?
資本主義社会では言うまでもない事ですが、「市場」が大きな役割を果たします。
ところがこの「市場」というものは、常に公正な取引を保障するものではありません。
常に市場には、詐欺師が横行しています。
また、市場は大衆心理を反映しますから、常に実態を伴わぬ極端な楽観論や悲観論が支配的になります。
かの有名な投機家ジョージ・ソロスは、「市場は常に間違っている」と、その本質を喝破しました。
市場は、常に間違っていますが、同時に実態と市場との乖離が極端になった時は、その誤りを正すような方向に行動します。
市場というものを、無定形な大衆の群集行動としてとらえれば、これは当然の事でしょう。
情報は常に歪められており、群集心理は常に扇動により、誤った方向に導かれます。
しかし、自らの行動が極端に環境に不適合となった場合は、自らの行動を正そうとします。
実際、市場とはこの群集心理の相対以外の何物でもありません。
次回は、第2弾アカデミー経済篇の総集編となるようなお話をさせていただきます。
是非、御期待下さい。
【予告】
次回、藤井厳喜アカデミー第2弾・第4回(最終回)は、7月22日公開です。
第1講 6月30日 (金) 「日本に復興財源はある」
そもそも「お金」とは、「通貨」とは何だろう?という根本論から見直し、政府貨幣発行通貨についても丁寧に解説しました。
第2講 7月8日(金) 「国民を幸福にする経済政策とは」
拙著『日本はニッポン!金融グローバリズム以後の世界』で提唱した新国民経済学の考え方をもとに、経済政策の考え方そのものを考え直します。
【藤井厳喜アカデミー関係動画・復習用の動画再生リストが出来ました】
■ 再生リスト【第1弾・藤井厳喜アカデミー国民の為の政治学講座・全篇】
http://www.youtube.com/watch?v?=zn5eCTbgHxc&list=PL72D9C8776C?E15846
2010年2月1日開校のガイダンスから全12回講義、補講までの全講座をまとめました。
■ 再生リスト2 【近現代世界の国際秩序の変遷:新しい世界史】
http://www.youtube.com/playlis?t?list=PLE25877D424835D45
こちらは、2010年1月20日の藤井厳喜・講演会で「近現代世界の国際秩序の変遷」について
語ったものを、改めてリストにまとめてみました。
この日、私が伝えたかった事は、歴史的な時系列を振り返り、日本が大局的に言って、
国際関係のどのようなポジションにいるかという事です。
米ソ冷戦後の世界にの権力構造がどのようなものになるか、という点を大胆な仮説も含めて、語らせてもらいました。
ここで取り上げる動画は限られた時間の講演の中の一部の内容ですが、大学で私の『国際関係論』や『新しい世界史』の授業を受講される方のご参考にもなればと思い、取り上げます。
■ 再生リスト3 【第2弾・藤井厳喜アカデミー 経済篇(随時更新)】
http://www.youtube.com/my_playlists?p=E4F42E64ED2C36F7
随時、更新してゆきます。
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《お知らせ:藤井厳喜・新刊 6月24日、いよいよ発売 》
『超大恐慌の時代
』 藤井厳喜・著 (日本文芸社)
大変、好評につき、発売、忽ち、増刷が決定いたしました!!
ご支援、誠に有難うございます。既に一部、品切れとなっているお店もあるようですが、随時、搬入されるとのことですので、是非、ご注文ください。宜しくお願いいたします。
世界経済を冷静に観察すると、日米欧中、みな揃って、景気が下降していることが分かります。特に日本においては、日本銀行と民主党政権がデタラメな経済政策を実行しているので、このままでは二番底に陥ることは確実です。
3・11の東日本大震災と、福島原発事故は、事態を更に悪化させてしまいました。
リアルに世界経済の現状を分析した本ですが、勿論、日本が最後のババを引かない為にどうしたらよいのかの対応策についても論じています。分かりやすく、図表もたくさん入れてありますので、経済が苦手という方も是非、手にとって、読んでみて下さい。
2011年に入ってからの中東騒乱も含む、最新情勢までカバーしてあります。
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』が第2位になりました。御支援、誠に有難うございます!! 】
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【お知らせ:藤井厳喜・新刊 『超大恐慌の時代
』(日本文芸社・刊)6月24日、いよいよ発売 】
↑ 世界経済のリアリズムと超無秩序化する国際政治のダイナミズムを描いた最新作です!!
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前回(アカデミー第2弾・第1講座)に引き続いて、「日本の国力倍増計画」について説明し、更に、日本国の国内総生産GDPを増やすにはどうしたらよいかを、分かりやすく具体的に解説します。
なお、当初の予定を変更し、次回・第3講の講座で、はじめに予定していたところの、「資本主義のカラクリ」と「市場とは何か」の2つのテーマを、合わせて公開いたします。
これは、2009(平成21)年2月18日に、『さらに!どんと来い大恐慌』という、『ドンと来い!大恐慌 (ジョルダンブックス)
』の関連商品であるDVD教材用に収録された講義の中から一部、無料にて公開させていただくものです。
是非、ご期待ください。
そして、最終回・第4回(7月22日公開)では、全3回で言い足りなかった事をまとめてお送りします。
ではリラックスして、本日の講義をご覧ください。
【藤井厳喜アカデミー第2弾】シリーズ《日本を復活させる智恵─増税を許すな!復興財源はこうして創れ!》
藤井厳喜アカデミー第2弾2講 国民を幸福にする経済政策とは?前篇[H23/7/8]
第2講 「国民を幸福にする経済政策とは?」前篇
(講師:藤井厳喜・国際政治学者)
YouTube : http://www.youtube.com/watch?v=pqwO78pHPEY
ニコニコ動画 : http://www.nicovideo.jp/watch/sm14955579
板書:
(1) 財政規律の問題
政府の通貨発行権を使って、震災復興と日本国力倍増計画を行う事が必要です。
しかし、政府の通貨発行権を無制限に乱用すれば、いつの日か通貨価値が急落し、悪性インフレを起こしてしまう可能性は存在します。
この可能性を排除する為には、政府通貨発行権の利用は、社会保障などの一般支出(一般財政)には向けず、あくまでも震災復興と国力倍増計画の支出に絞るという方法が考えられます。
これらの支出を一般会計予算とは別の特別会計として、運用するという方法です。
最も1年に1兆円ずつ歳出が増加する社会保障・福祉費の事を考えれば、一般会計の中でも社会保障福祉予算に関しては、政府の通貨発行権を活用した財源を使うことも考えてよいでしょう。
いずれにしろ、大衆迎合的な政治家が、政府の通貨発行権を悪用して、将来乱用しないような仕組みをはじめの時点から考えておく必要があります。
(2) 通貨の本質=信用
通貨の最も重要な役割は、交換の媒体であるということです。
交換の媒体であり、付随的には富の蓄積の手段となります。
交換や蓄積の媒体(道具)として機能するために最も重要な事は、通貨が人々に信用されているということです。
つまり通貨の本質は信用ということにつきます。
信用という点に関しては、通貨の形が金貨であれ銀貨であれ、紙幣であれ、全く同じことです。
但し、紙幣の場合は、それを発行する主体である国家や銀行の信用が基本となります。
金や銀の場合は、歴史的・文化的により多くの人々が価値あるものとして受け入れているので、通貨として通用しています。
ただし金や銀も、時代や場所によって、その価値が変動するのを避けることはできません。
前回の講義とも関連してきますが、現在のような国家が紙幣を中心とする通貨を発行している体制(管理通貨制度)においては、通貨の信用を支えているのは、国家の信用です。
そして、更にこの国家の信用を保証しているのは、国民の勤勉性です。
つまり、一国の国民が「必要で有用」なものやサービスを作り出す力こそが、通貨の価値を根底で支えているのです。
単純化して言えば、国民の生産力こそが、国家が発行する通貨の価値を支えているのです。
「政府の通貨発行権」というのは、この原点に戻って、公民が潜在的に持っている生産力を担保として、発行するものなのです。
通貨の価値の根本を考えれば、政府の通貨発行権の利用による経済復興政策は、なんら奇異なことでもタブー視すべきことでもありません。
↑ この回の詳しいデータ等、フォローアップは、『日本はニッポン! 金融グローバリズム以後の世界
』(特に、P78からP92と、P48からP51)をご参考ください。
藤井厳喜アカデミー第2弾2講 国民を幸福にする経済政策とは?後篇[H23/7/8]
【藤井厳喜アカデミー第2弾】シリーズ《日本を復活させる智恵─増税を許すな!復興財源はこうして創れ!》
第2講 「国民を幸福にする経済政策とは?」後篇
(講師:藤井厳喜・国際政治学者)
YouTube: http://www.youtube.com/watch?v=PZzrYDSjM0E
ニコニコ動画: http://www.nicovideo.jp/watch/sm14955890
板書2:
【日本国の経済はどのようにして成長可能になるか】
(この項目に関しては、詳しい数字をあげた細かな解説は拙著『日本はニッポン! 金融グローバリズム以後の世界
』(渡邉哲也氏との共著)のP78からP92で行っていますのでご覧ください。)
この講義で述べるのは、その骨子です。
日本の経済はどのような仕組みで成長するのでしょうか。
言い換えれば、日本経済の成長のエンジンは何なのでしょうか?
日本経済という列車を引っ張っている機関車となっているのは、《 (1) 政府支出+ (2) 純輸出+ (3) 民間設備投資 》の総額です。
この総額が、増えるとGDP全体が増えます。
正確にいえば、この総額が増えると、「国民の個人(家計)消費」が増えて、国内総生産(GDP)全体が大きくなることになります。
経済成長とは国内総生産を大きくすることです。
この国内総生産を大きくする為には、《 (1)+(2)+(3) 》を大きくするような政策をとることが必要です。
日本の現在のGDPはおおよそ年間500兆円です。
これが国民が1年間に生産する富(経済価値)の総量です。
《 (1)+(2)+(3) 》は約200兆円です。
これが増えると、残り300兆円の個人消費が増えることになります。
日本国民は真面目なので、減税をしてもこれが直ぐに消費に結びつきません。
《 (1)+(2)+(3) 》が増大して、景気が良くなったことが実感できた時にのみ、国民は財布の紐を緩めて消費を増やすことになります。
現在の情勢では、純輸出(輸出マイナス輸入)は、世界的な不況の為に、落ち込みつつあります。政府支出は財政再建で切り詰められつつあります。
そのために、民間の設備投資も増大するわけはありません。
この為に、日本経済はデフレ不況から脱出できないでいます。
世界経済の現状を日本一国が変えることは不可能ですから、輸出を急増させることはできません。
また民間に無理やり設備投資を共用する事も出来ません。
日本経済をけん引するエンジンであるこの3つの項目の中で、政府が増やす事ができるのは、政府支出だけです。
ですから、政府通貨発行権を使い、大規模な公共投資を行うことによって、政府支出を増やす必要があります。
かつては公共投資は日本のGDPの12%くらいを占めていましたが、それが橋本龍太郎内閣以来、下落し、現在既にGDPの4%程度にまで縮小してしまいました。
トンネルや橋梁に代表される日本国中のインフラは今やガタガタになっています。
これらを復活し、震災復興を行い、更に地震を含むあらゆる天災に耐えうる国土を作るために、大規模な公共投資を行う必要があります。
私はこれを「国力倍増計画」と呼んでいます。
この計画の実行により、10年間でGDPを倍増する事は容易です。
★ なお、本講でも取り上げました「永久国債の研究」については、こちらをご覧ください。
【予告】
次回、藤井厳喜アカデミー第2弾・第3回は、7月15日公開です。
第3回講義では、冒頭に述べましたように、「資本主義のカラクリとは?」「市場とは何か?」という、
経済の本では出てこない、最も本質的なお話を致します。
これは、2009(平成21)年2月18日に、『さらに!どんと来い大恐慌』という、『ドンと来い!大恐慌 (ジョルダンブックス)
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『超大恐慌の時代
』 藤井厳喜・著 (日本文芸社)
著者もビックリの凄いタイトルですw(><) (表紙もインパクト…)
一時、候補になっていたタイトルに『世界大破産』というのもありました。(←これを見た時、流石にふきだしましたwww)
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↑↑ 東北の文化・風土史そして災害史がよくまとめられてあります。東北の事を考える上で、貴重な資料だと思います。
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以前から、「外国語をどう学べばよいか」といった相談をよく受けます。
最近では、急遽、外国に転勤することになった、それも英語圏以外に、といった方からも、相談を持ちかけられます。
中には、旦那さんが転勤するので、それに動向しなければいけない主婦の方などからも、相談を受けることがあります。
英語圏への赴任ならば、然程、問題はないでしょうが、それ以外の言語圏への赴任となると、大きな不安が伴うようです。
実は、「語学の速習法」などというものは、本当はないと思っています。
語学の上達は、だいたい学習に投入される時間とエネルギーに正比例します。
最も、外国語学習にも、数学などと同様、天才という人たちがいますが、この人達は例外ですから、我々の学ぶべき実例にはなりません。
若くはなくて、そこそこいい年になって、全く知らない言語の話される外国に行くことになったら、どうしたらよいか。
私自身だったら、こうするという方法を考えてみます。
例えば、私がインドネシアやタイに、長期赴任することになったら、どんな風にその国の言語を勉強しようとするでしょうか。
先ず、最も基本的な単語を100くらい、徹底的に丸暗記します。
数の数え方も、必要です。
挨拶の文句や買い物に必要な言葉、などを徹底して頭に叩き込みます。
100の言葉を覚えたら、それを200、300、500くらいにまで増やします。
先ず、500くらいの単語を覚えれば、最も基礎的な日常会話は可能になるはずです。
後は、とにかく日常の中で、その言葉を多く使うことです。
周りには、ネイティブ・スピーカーがあふれているわけですから、誤った表現をしてもらった時には、必ず直してもらうようにします。
常時、モバイル機器か手帳のようなものを持ち歩いて、新しく覚えた単語や、修正された表現は、記録しておくようにします。
時間を見て、それらの記録を繰り返し、復習します。
単語の数や、表現法の数を増やしながら、最も重要な文法の基礎だけは押さえておく必要があります。
その言語では、過去や未来をどう表現するのか、とか、「仮定」の表現をどのようにするのか、とかいったことは、非常に大事になってきます。
ある程度、文法の基礎中の基礎と、マスターした単語や表現の数が増えたなら、その時点で、私だったら、テレビやラジオのニュースを徹底的に聞き取る訓練をします。
そして出来れば、それと並行して、政治や経済の新聞記事を読解する努力をします。
これにはおそらく、個人で家庭教師を雇うことが最善の方法だと思います。
量は少なくてもよいから、1つの記事や文章を、徹底的に理解します。
出来たら、暗記するくらいになるとよいでしょう。
一点の疑問もないように、完全に理解しなければいけません。
少しでもわからない所や、曖昧なところがないように、完全に1つの文章や記事を理解することが大事です。
こういったことを続けてゆくと、多分、丸2年もその国にいれば、語学学習者としては中級レベルには到達することができると思います。
多分、大事なのは、外国語学習を、苦難とは考えずに、アミューズメントと考えることですね。
つまり、自分の母国語と異なる外国語の学習を、面白いと感じることができれば、苦労ではなくなります。
時間はかかりますが、楽しみになります。
そう思えるかどうかが、実は、語学に上達できるかどうかの大きな分かれ道なのだと思います。
また別の言い方をすれば、外国人なのですから、どんなに努力をしても、所詮、ネイティブ・スピーカーのように、完璧にその言語を操れるようにはなりません。
所詮、「外国語は外国語である」と初めから、大きな諦めをもっていることも大事です。
そうでないと、どんなに勉強しても、挫折感だけに悩まされることになります。
言語によって、難しいポイントは異なってきます。
それは母国語と外国語との距離とも関係します。
イタリア人が、スペイン語を学習することは、酷く簡単なはずです。
また、ドイツ人がデンマーク語を習得することも、然程、難しくはないでしょう。
しかし、日本人がドイツ語やロシア語を学習しようと思えば、単語の記憶以上に、大きな壁として立ちはだかるのが「文法」です。
文法を正確に理解することなしに、ドイツ語やロシア語を読み書きすることは不可能です。
英語の文法は、極めて単純ですので、ドイツ語やフランス語に限りません、他のヨーロッパの言語を勉強しようとした場合、文法の難解さが大きな壁になります。
しかし、そこで怯むことはありません。
かつて、私がアメリカでロシア語を勉強していた時に、幼少時にロシア革命でアメリカに亡命してきたロシア人の老教授が私にこう言ってくれたことがあります。
「ロシア語の文法は非常に複雑なように思えますが、全ての変化は、小さな文字で書けば、この紙一枚に収まります。」
そういって、教授は、文法の変化表を、大きな紙一枚に表記したものを見せてくれました。
それは、A3版が2枚くらいの大きさで、非常に小さな字でミッチリ書かれているのですが、確かに、「あぁーこれだけ覚えればいいのだなぁー」という安ど感もあります。
「ロシア語の文法法則は、無限ではないのだ。有限であり、目に見えるこの大きな紙一枚をマスターすればよいのだ。」と思うと、精神的に楽になります。
こういったことは、どの言語にも当てはまるはずです。
英語と並んで、支那語には殆ど、文法らしい文法がありません。
支那語の達人に聞くと、とにかく、様々な表現法や単語・熟語の数を増やしてゆくというのが、学習法のようです。
文法の学習ではなく、ここの表現法に習熟してゆくということが、文法が簡素な言語の学習法の王道のようです。
ドイツ語やロシア語のような文法的に難解な(少なくとも我々にはそう思える)外国語を勉強する場合には、一つの救いがあります。
私の一般的な印象では、文法的に複雑な言語ほど、日曜用語に必須とされる単語の数が少ないことです。
例えば、これは以前読んだ本なので正確ではないかもしれませんが、
新聞や雑誌に出てくる言葉の90%をカバーするのに、単語をいくつくらいマスターしなければならないか?という基準があります。
フランス語やドイツ語では、5000語マスターすれば、90%のラインを超える事が出来ます。
これに対して、文法が単純な英語では、このラインが確か、8000語くらいのはずです。
つまり、言語というものもバランスがとれていて、文法的に比較的単純な言語においては、単語の数を多く習得しなければならない。
文法的に複雑な言語においては、逆に、習得すべき単語の数はそれほど大きくなくてよい。
何か、そんな法則があるように思います。
これは言語学者に聞いてみないと分かりませんが…。
最近は、外国語学習においても、音声や映像の教材が豊富に手に入りますので、これは非常に強い味方です。
いつでも、どこでも、やる気さえあれば、勉強が可能です。
現地に赴任する前から、挨拶の言葉くらいは、マスターする事が、どんな忙しい人にも出来るでしょう。
外国駐在が楽しくなるかは、私の見たところ、語学能力というよりは、寧ろ「パーソナリティーの問題」なのではないでしょうか?
個性豊かで、異文化に対する許容性があり、異文化との差異を楽しむような心境になれば、それは語学能力以上の、「現地への適応力」への源泉となります。
行きたくもない国に、突然、会社の都合で行け、と言われた方には、大いに同情しますが、
どうせ赴任するなら、それを「負担」とのみ考えるよりは、人生の新しい地平線を切り拓くチャンスと考えることができれば、貴方は既に、勝ち組の一人になったといえるでしょう。
最近は、相談を頂いた方に、こんなお答えをするようにしています。
人それぞれ、状況色々ですので、お役にたつかどうかは分かりませんが・・・・・・・。
最後に一言!
日本語を勉強している欧米人が、どんなに苦労しているかを知れば、我々も非常に気が楽になります。
全く異なる文法と、2種類の表音文字の体系と、最低3000くらいの表意文字(漢字)をマスターしないことには、日本語の読み書きは不可能です。
モンゴル人やトルコ人は、同じウラル・アルタイ語系の言語なので、日本語のマスターは比較的容易だそうです。
ただし彼らにとっては「漢字」が大きな障害となっています。
逆に、シナ人は、文法は全くことなりますが、漢字という共通項があるので、これまた別の意味で、日本語の習得が比較的早いようです。
我々の側からすれば、以前、トルコ語の先生に聞いたのですが、日本人がトルコ語を学習することは、比較的容易だそうです。
語順にしても、「私は大阪に行く」という日本語と全く同じ語順で話せばよいのだそうです。
ですから、日本語に近い言語(これはあまり多くはないのですが)を勉強するのなら、日本人も語学が得意ということになるでしょう。
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