昨日、6月18日夕方、東京駅直ぐの新丸ビルにて、山本伸さんの出版記念パーティーでご挨拶させていただきました。
先日からブログでも何度もご紹介しております、私も鼎談で登場しました、山本伸さん監修の『環境バブルで日本が変わる! オバマ大統領「グリーン・ニューディール」の激震 (別冊宝島1617)
』の出版記念のパーティーでした。
私も、特別ロング座談会の鼎談メンバーの1人として、「環境バブル」についての私のスタンスや、最近の情勢など、お話させていただきました。
メディア関係者の方々や、金融や株関連の方々など、実に多彩な顔ぶれの参加者の方々で活気溢れる、和やかなパーティー会場でした。
鼎談メンバーも、本の座談会の時以来、久々に3人揃っての顔合わせで、楽しくお話させていただきました。
この本は今こそ「グリーン・ニューディール」や環境ビジネス関連情勢の情報ガイドブックとして、読んで欲しい1冊です。
『守るべき日本の国益―菅沼レポート
』(青志社 1575円)
菅沼光弘先生は、昭和11年生まれ、東大法学部卒業後、昭和34(1959)年公安調査庁に入庁し、対外情報活動部門を中心にソ連、北朝鮮、シナの情報収集に35年間あたり、対外情報の総責任者である調査第二部長を務め、平成6(1995)年に退官されている。
菅沼先生は、私が最も尊敬する対外情報分野の専門家である。
冷戦時代は公安調査庁は日本のCIAとも呼ばれた組織である。
その対外関係部門の最高責任者を務められた先生は、まさに日本で最高のインテリジェンス(諜報活動)の専門家である。
また、日本が本格的な情報機関(プラス特務機関)を創るとすれば、その初代長官は菅沼先生をおいて他にはいないであろう、と、言われてきた。
意外なことだが、この本は菅沼先生の初めての単著である。
日本の安全と外交に興味のある人々に必ず読んで欲しい名著である。
この本を読み始めるにあたっては、序章を読んだ後に、寧ろ終章(P248-P253 )を読み、その後に第一章から順番に読むと分かりやすいだろう。
この本は、3つの部分より成り立っていると思われる。
第1は菅沼先生の回顧録的な部分である。
第2は第二次大戦後の日本がおかれた外交状況と公安調査庁を中心とする日本のインテリジェンス・ヒストリーの部分である。
第3は、日本の現状と予測、さらにそこから生じる危機感の部分である。
終章のはじめに、はっきり著者自身が述べているように、この本のテーマは単純明快である。
「なぜ私が封印を解いて、この拙い単著を発刊しようと決意したか。それは、国を守るためには、愛国心が必要不可欠だということを、しっかりと読者のみなさんに伝えたかったからだ。
現在の日本は、極めて危機的な状況にある。この国難を乗り切るために、一人でも多くの人に、愛国心を持って望んでもらいたい。それが私の願いだ。」(P248)
本書の第1の部分、第2の部分については、ここで書評者である私が細々と紹介するよりは、読者に本文を直接読んでもらうことの方が適切であろう。
いくつもの興味深いエピソードに溢れた叙実であり、非常に読みやすい構成となっている。
私がここで紹介したいのは、第3の部分、すなわち日本の現状と近未来の予測であり、これに関しては菅沼先生は極めて悲観的であり、日本が没落の危機にあることを指摘されている。
より正確に言えば、アメリカとシナを中心に反日包囲網が形成されつつあり、日本の将来は極めて暗いという認識を先生は持たれている。
現在、北朝鮮問題を処理する為のいわゆる6カ国協議は現在既に日本を封じ込める対日包囲網となりつつあり、アジアはアメリカとシナの2国を中心とする共同管理の下に置かれてゆくのではないか?
というのが先生の危機感である。
「核問題が解決しないまま、2008年にアメリカは北朝鮮を「テロ支援国家」の指定から解除し、経済支援の道を開いた。
中国はすでに2005年から北朝鮮に投資し、経済交流を発展させている。
(中略)
「しかも、六カ国協議を「北東アジアの平和と安定を守るための恒常的な多国間の機構としていこう」という機運が各国間で高まっている。
するとどうなるか。
すでに東西冷戦は終わり米中対決が解決すれば、アメリカは日本を軍事拠点にする必然性は何も無い。
つまり日米安保条約は解消し、六カ国協議で北東アジアの平和と安全を守っていこうということになる。日本の安全は名目上、アメリカの「核の傘」から、六カ国協議の枠組みの「核の傘」に依存することになる。」(P.49) 注:アンダーラインは書評者。
この数行に菅沼先生の現在の憂国の想いが最もよく表れているように思う。
露骨に言うならば、六カ国協議は、最早、北朝鮮の核武装を阻止する枠組みではなく、日本の核武装を阻止する枠組みと成り果てているのである。
本書は、2009年3月の発行だが、米オバマ政権が親中化し、かつてのクリントン政権時代を上回る米中緊密化が必ずおきてくるだろう、と断言している。
私も、この予測と憂慮を120%共有するものである。
そもそも、ソ連邦が崩壊し、アメリカが冷戦に勝利した後、外交戦略の中心は経済戦争の分野へと転進した。
日本人は、アメリカとの経済関係を単に「経済摩擦」としか捉えなかったが、アメリカ側はこれを経済戦争と捉え、日本経済をアメリカの意のままに操る戦略戦術をフルに発動してきた。
オバマ新政権の顔ぶれを見ると、アメリカが日米安保条約を事実上破棄し、第二次対日経済戦争を仕掛けてくる事が明白である、と菅沼先生は警告している。
日本が自らの文明と国益を維持発展させる為には何をしなければならないか?
まず日本人は、対アメリカ観を根本的に見直し、また、国際政治とは所詮、弱肉強食のジャングルの法則が支配するものであるという事実を直視しなければならないだろう。
多くの人がこの名著を読み、一人でも多くの国民が真の愛国心と危機感に目覚める事を期待したい。
本日午後6時半から「正論を聞く集い」で講演させていただいた。
三輪和雄さん主催のこの会で年に1度は日本外交の展望について話をさせて頂いている。
通常は1月にその年の外交展望と題してお話させていただくのだが、今年は様々な理由で6月のスケジュールになってしまった。
今日はアメリカのオバマ政権と日米関係の今後の見通しについてお話させていただいた。
表面上ではオバマ政権の外交は前ブッシュ政権の外交とそれ程大きく変わっていないように見える。
しかし、これは大きな誤解である。
恐らくオバマ政権は今後、東アジア外交に関しては、チャイナ重視の姿勢に強く傾いていくだろう。
また、オバマ政権はその第1期目に北朝鮮との外交関係を樹立するであろう。
東アジアは米中の共同管理体制となり、日本はその狭間に埋もれてしまう事になるだろう。
以上のような点については、このブログ上でも何回か指摘してきたと記憶している。
ブッシュ・ジュニアの政権がスタートした2001年1月に、私は今日のような状況になるのを恐れ、その事の警告を様々な場所で発してきた。
当時私が言っていた事は、
「ブッシュ政権が続く2期8年のうちに最低限、日本は集団自衛権を承認し、日米関係をより対等な同盟関係にまで格上げしなければならない。
ブッシュ政権の後にはほぼ確実に米・民主党のリベラルな政権が誕生するであろうし、この政権はクリントン政権同様にチャイナを重視し、米中蜜月時代が再び到来するであろう。
日本が埋没しない為には日本重視のブッシュ共和党政権が継続している間に、日本の存在価値を高め、日米関係を真の同盟関係にまで格上げする必要がある」
ということであった。
残念ながら日本は、ブッシュ政権2期8年の間に集団自衛権を承認せず、今まさに日本は米中の狭間に埋没する存在となりつつある。
予期し、心配していた事がそのままに実現してしまい、私としては何とも憤懣やるかたの無い思いである。
世界最大の外貨保有国であるチャイナはアメリカに対して経済的に有利な立場にある。
アメリカは米国債を売り、ドルの価値を維持していく為に、常にチャイナに気を配らなければならない。
日本もチャイナと同等以上の経済的優位性をアメリカに対して持っているが、日本はこれを決して政治的影響力に転換しようとはしない。
それゆえアメリカは日本を属国的な存在とみなし、日本に政治的妥協をしようとはしない。
この全く逆がチャイナである。
日本は全く政治的意思を失った宦官の様な国家として漂流しているとしか思えない。
オバマ政権に関しては、一見この清新な極左とさえ言える政権が実はアメリカ金融界の太い紐付きである点も指摘しておいた。
実際、オバマが実行しているのは、公的資金を通じた金融機関やGMに代表される大企業の救済であり、アメリカ財界にとってこれほど優しい政権は無いわけである。
昨年の大統領選挙で共和党のマケイン候補が勝っていたら、寧ろ金融機関や大企業の救済には冷淡であり、潰すべき企業はドンドン潰していたかもしれない。
マケイン氏はアメリカ大企業にもおもねらない独立の候補者であり、アメリカ財界にとってはオバマ氏よりも寧ろ冷たい存在であったに違いない。
オバマは失業救済の美名の下に、公的資金をふんだんにばら撒いてアメリカ企業社会を救済し続けている。
アメリカ財界としても、経済危機を乗り越える為に、国民の同意を得なければならず、その為にはオバマ氏のように黒人で勤労者階級の代表と見えるような政治家を国のTOPの地位につける必要があったのであろう。
大体、そんな話を今晩はさせていただいた。
この会は、大変知的レベルも高く、情報に敏感な人々が多いので、質疑応答も非常に活発に行なわれた。
大学でやっている授業よりも聴衆のレベルは数段上であったといわざるを得ない。
2次会でも質問や熱い議論が続き、あっという間に2時間が過ぎてしまった。
会長の三輪さんのいつもながらの気配りには、心から感謝している。
意識の高い聴衆なので、持参した本等も大変、反響が高かった。
本日の講演会でも多数、取り上げた、「ドンと来い!大恐慌
」CMより
現在発売中の週刊現代(6月27日号)が、『独占 P・クルーグマン「景気回復の正しい読み方」』と題するインタビュー記事を掲載している。
今更言う必要はないと思うが、クルーグマン氏は2008年のノーベル経済学賞受賞者であり、米プリンストン大学教授の著名なエコノミストである。
彼の論点を簡単に批判してみたい。
昨今、日本に関するコメント等で何かと話題の多くなったクルーグマン氏である。
コンビニエンスストアで、表紙にかかれた「独占 P・クルーグマン」の特集という文字に目がとまり、開いてみた。
中は、写真を入れてたった4ページの短い記事ではあるが、全体としての印象は、クルーグマンの言っている事も結構、いい加減である。
1、 クルーグマンによれば、実質的な国有化による米GM救済策に関しては、
「勝算は五分五分―。明らかにギャンブルだが、賭ける価値は十分にある」 そうだが、私はほぼ確実にGMの救済は失敗すると予測している。
理由はいくつもある。しかし、最も重要な救済失敗となる理由はGMが時代の要請に沿った魅力ある車を今後とても製造できそうにも無いからである。
金融的に救済しても、市場の求める自動車が作れなければGM全体の救済は不可能である。
発展途上国の自動車産業の追い上げもある。
日本の自動車産業ですら苦しい立場に置かれているのに、GMが全体として復活する事は殆ど不可能であろう。
現実的には恐らくGMの中で最も特徴のある(市場競争力のある)いくつかの部門だけが生き残る事になるだろう。
2、 クルーグマンもかなりいい加減だなぁーと思うのは、インタビューの中の次のような言葉である。
一方で、「景気後退がこの夏に終わっても驚かない」(つまり、この夏を大底としてアメリカ景気は上昇する)と言っておきながら、他方では「失業率の上昇は今後も続くし少なくとも来年いっぱいは高止まりするだろう」
「そうなれば、GDPが多少は上向いたとしても経済低迷はなお数年は続く事になります」
とも答えている。
一体景気は回復するのか?不況が続くのか?クルーグマンの答えは全くハッキリしていない。
分かれ道に立って、「右に行くかもしれないし左に行くかもしれない」と言っているに等しい。
ただし、インタビューの行間を読めば、アメリカ景気の先行きにはどちらかと言えば悲観的なようだ。
はっきりモノが言えないというのは要は自分の予測に確信が持てないからだろう。
3、 クルーグマンの意見に賛成する部分もある。
2002年から2007年にかけて日本が景気回復している時に日本は外需依存の体質を改めて内需主導的な成長のパターンに経済を構造変革すべきであった、との主張に関しては私は全く同意する。
かねてから私自身が主張していた点でもある。
近著、『ドンと来い!大恐慌』でも、そのような主張を展開している。
ただし、現状の日本経済の停滞への対策としてインフレ・ターゲット論を主張するだけでは全くポイントがずれている。
内需拡大を伴わないインフレ政策は、スタグフレーション(物価上昇と景気後退の同時進行)をもたらすだけである。
政財官・協力しての内需喚起策(ケインズ主義的政策と言っても良い)を断行しない限り日本経済は現在の停滞を脱する事はできない。
真の内需主導型の景気回復が起きて来たときに初めてその結果として適度なインフレが起きてくるのである。
歴史上、インフレを人工的に制御して起こし、それをコントロール出来た試しは無い。
経済成長の結果としてインフレが起きてくると言うのが最も正常な状態であり単に通貨供給量を増やすだけでは景気は良くならない。
クルーグマンは、日銀が通貨供給量さえ増やせば適度なインフレがおき景気が良くなると考えているようだが、この考えはハッキリ言って間違っている。
いくら通貨供給量を増やして金を借りやすくしたところで、需要の拡大が無ければ経済は成長しない。
4、 クルーグマンは麻生政権が行った定額給付金政策をこっ酷く批判している。
それが景気刺激策にはならないという理由からである。
一方で、今後予想される日本の消費税率アップには、ハッキリと反対している。
「消費税率アップをこれほど景気が悪い上体で実施するのは馬鹿げている」
「今は断じて、消費税を引き上げるべき時ではありません」
と、断言している。
これはこれで最もな発言のように聞こえる。
しかし、よく考えれば彼の発言は矛盾している。
定額給付金は考えようによっては「戻し税」であり、一時的であるにせよ、消費税の低下とも考えられるわけである。
「消費税のアップ」に反対するクルーグマンの考え方からすれば、消費税の引き下げは明らかに景気にはプラスになるはずである。
二つの発言は論理的には矛盾しているように思われる。
5、 短いインタビューであるので、クルーグマンが世界経済を全体として今現在どのように捉えているかは(この記事では)不明である。
しかし、このインタビューが見落としているのは、現在の世界経済の最も基本的な構造上の矛盾である。
それは、一言で言えば「経済上の南北問題」である。
低開発国の産業が発展し、低開発諸国の国民の生活は相対的に良くなっているが、一方、これらの低開発国に追い上げられている成熟産業を持った先進国の経済は衰退し、先進国の勤労者の生活水準は相対的に引き下げられつつある。
世界経済全体とすれば、非常にマクロ的に言えば、賃金の平準化が起きているのであり、これがグローバルなマーケット(市場原理主義)のもたらした必然的な一つの結果である。
トーマス・フリードマン『フラット化する世界(上)
』の『フラット化』とはまさに南北間の経済の平準化を言っているのである。
フリードマンは「フラット化」というが、この言葉は極めてミスリーディングである。
何故なら南北間がフラット化する一方で、世界全体としてみれば、経済構造は著しく垂直化しているからである。
つまりそこには、グローバルな経済階級社会が形成されつつあるのである。
「フラット化」ではなく「垂直化=ヴァーティカル(Vertical)」な社会である。
クルーグマンがこの事を明確に認識しているのかいないのかは、この短いインタビューからは分からない。
しかし、この世界経済の水平化と垂直化の2つのトレンドを同時に見ておかなければ、世界経済の全体像は見えないし、各国政府が取るべき正しい経済政策も提言できないであろう。
6、 クルーグマンの警告の中で我々が真摯に受け止めなければならないものもある。
それは、金融危機以来、アメリカ人のメンタリティが変化し、借金してでもモノを買う体質が変質し、貯蓄に励むようになったという指摘である。
これがもしそのとおりならば、日本の対米輸出は今後長期的に大きな打撃を受ける事になる。
例えアメリカで景気が回復したとしても、かつてのようには日本製品が売れないという自体が起こる事になる。
その点からも日本は本格的な内需拡大策を取る事が重要であると私は思う。
米オバマ政権が環境政策を推進し、所謂グリーン・ニューディール的な経済政策の方向に進んでいる事は周知の事実だが、この中で私が注目してきたのは、オバマ政権が原子力発電を推進するかどうかの一点である。
オバマは大統領候補としては原発推進なのかどうかを曖昧にしてきた。
私は、最終的にはオバマは原発推進派になるのではないか?と予測してきたが、この予測が危ういものとなってきた。
オバマ政権が計上しつつある新予算では、核廃棄物の処理予算が増額されるどころか何と38%も削減されていると言うのである。
原子力発電を増大させようと思えば、当然のことながら廃棄物予算も増額しなければいけないはずであり、アメリカのみならず日本の原発業界もこの予算措置に大きなショックを受けている。
オバマ大統領の財政上の支持者であるウォーレン・バフェット氏は原発推進であり、私はそれ故にオバマもまた原発推進派に転じるものと思ってきたが、事態は微妙な事になってきた。
今のところ可能性は二つある。
第一はオバマが愚かな選択をし、所謂グリーン・エネルギーだけに頼って原発を推進しないと言う可能性である。この場合、アメリカの経済は更に弱体化することになるだろう。
基本的に石油派だった前ブッシュ政権ですら原発の必要性を認めていたのにオバマがこれを否定するとすれば本当に愚かな事である。
第二の可能性は原発業界で日本企業があまりに優位なため、これを叩く為に一時的に原発に背を向けているという可能性である。
新規原発を造らず、日本の主要原発3社(日立・東芝・三菱重工)を徹底的にたたき、これを後でアメリカ企業に安くM&Aさせるという手法も考えられる。
あるいは、第3の方策としては、従来型の原発を廃止し、トリウム原子炉という新型の原子炉を全面的に採用するという奇策も考えられる。
ケンブリッジ・フォーキャスト・レポートでは、このトリウム原子炉の可能性について、専門家の方に3回にわたって連載をしてもらってきた。
その概要については明日以降のブログで紹介したい。