藤井厳喜WEBサイト 公式ブログ プロフィールは、こちらトップに戻る 藤井厳喜WEBサイト | Fujii's Focus For Future 公式ブログ

『撃論!富国強兵号』掲載論文―新しい“リアリティー”の時代へ:藤井厳喜の核武装論

投稿日:2011,05,23

★  藤井げんき・政治活動専用のアドレスが出来ました【 gemki.fujii7@gmail.com 】
【藤井厳喜Twitterサイト】(日夜、Twitterならではの活動のリアルタイム実況中継や裏話等もしています。)
https://twitter.com/GemkiFujii
  blog_neko-mini.jpg


 「撃論ムック」がリニューアルされ、最新号 撃論 富国強兵号 vol.1「いまだ放射能で滅んだ国は無し、原発よりも危険な中国に備えよ!」 (OAK MOOK 377)  が、4月28日に発売されました。


 その号内に、私は、この「日本核武装推進論」を寄稿しました。

gekiron-fukoku.jpg

 私は、「脱原発」論者ですが、その上で、核武装は必要であると考えています。
本論文は、3月11日以前に書いたものですが、全く変更の必要はないと考えています。

 この「日本核武装」に関する拙論を、震災以降の私の一連のブログ公開論文と合わせ完全公開し、幅広い方々に多く読んで頂きたいという願いに対し、今回、特別に、論文を寄稿した出版社(オークラ出版様)の快諾をいただく事がかないました。
版元のオークラ出版社、並びに編集部の御理解、御厚意に、改めて感謝申し上げます。

 脱原発と核武装推進は一見、矛盾すると考える方も多いでしょうが、そういった方々にこそ、是非、他の諸論文と合わせてこの論文を読んで頂きたいと思っています。

 様々な御意見が寄せられる事を期待しております。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

新しい“リアリティー”の時代へ  ― 21 世紀、日本の選択

「震災日本だからこそ考える改憲と核」
                             藤井 厳喜 

チャイナの膨張と核拡散はアメリカの一国優位を崩壊させ、時代は混迷の世紀へと向かっていく。
日本は国内的にも対外的にも困難の時代へと立ち向かってゆかねばならない。

■ もはや核武装はタブーではない 

 2011年2月15日付・産経新聞は、同社が行なった政治・安保世論調査の結果を公表した。
この調査によれば「政府や国会が核問題に関する議論をするのは賛成か?」との問いに、何と 86.7パーセントが賛成と答えている。
また、「北東アジアの核兵器の現状をどう感じているか?」との問いに対しては「不安を感じ る」と答えたものが84.1パーセントもいる。

又、「非核三原則の見直しを肯定する」という者が39.0パーセントおり、「米国の核の傘を信頼できない」と答えたものも32.6パーセントに上った。

つまり、非核三原則見直し派は約4割おり、自主核武装への道に連なるアメリカの核の傘を信頼できないとする人が約3人に1人いたわけである。


 北朝鮮の核兵器保有宣言等を受けて、日本においても、核抑止力に関する議論をタブー視せず、堂々と国会で核問題を論議すべきだという意見が圧倒的多数を占めるようになった。
ようやく議論の入り口に辿りついた、という感じである。

 日本国民は、いかに自らの手で自らの安全を守るかの議論を、勇気を持って始めようとしている。
やっと辿りついたこの議論の入り口から後戻りする事はもう許されない。
現実を直視し、我々自身の安全を守る手段を、主体的に決断してゆかなければならない。

こんな当たり前の事を今更のように強調するのも気が引けるが、それだけ防衛問題、特に核問題についてはタブー視する力が強かったのである。

 結論から言えば、私は以下の様な原則に従って、日本は国防政策を構築すべきであると考えている。


(1) 自主国防

 言わずもがなであるが、国防は自主防衛が基本である。
自らの国を自らの手で守り、その足らざるところを他国との協力関係、また同盟関係によって補っていくべきである。
他国に対する依存から始まる国防論議はナンセンスである。
しかし従来の国防方針においては、「初めに日米安保ありき」が原則であり、前提であった。

アメリカが日本を守ってくれる事を前提とし、その足らざるところを補うのが自衛隊である、というのが基本方針であった。
この方針を根本的に逆転させなければならない。

つまり、自主国防が主であり、その足らざるところを日米安全保障条約等によって補うという新方針を国防の基礎に据えなければならない。


(2) 憲法9条改正

 当然、最低限の条件として、憲法9条の改正は必要である。
日本人は国防軍を創設し、自らの安全を守る旨を憲法に明記すべきである。


(3) 核武装

 核兵器が拡散してゆく状況を見ると、もはや、日本の核武装は避けて通る事が出来ないであろう。
国防体制は、1つのシステムとして整備しなければならず、核装備を欠く国防システムでは、日本国民の生命と安全を守りきる事は出来ない。
これは現実をよく見てみれば、簡単に了解できる事である。
好悪の問題は別として、日本人の頭上に第3発目の核兵器が炸裂する事を防ぐ為には、日本の核武装は不可避であろう。


(4) 対米同盟堅持

 国防におけるアメリカとの協力関係は、これを維持・発展させてゆくべきである。
核武装を含む自主国防体制を整えた日本が、アメリカと、そしてアジアの民主国家と手を携えて、地域の安定秩序を保ってゆく事が、日本の基本方針である。
核武装した日本とアメリカとの同盟関係は可能である。

可能であるばかりではなく、日本が核武装を含む自主防衛努力を高めてこそ、より強い日米関係の構築が可能となる。

アメリカが日本の核武装を原則的に拒否しているというのは、もはや、完全に過去の話である。
以上のような結論に、何故到るのかを以下に論証してゆきたい。



■ 核拡散防止体制は有名無実

 核兵器の拡散を防止する体制は、今や確実に崩壊しつつある。
米ソ冷戦時代は一応、国連安全保障理事会の常任理事国のアメリカ・イギリス・フランス・ソ 連・中共(チャイナ)の5大国による核兵器の独占体制が維持されていた。
インドはいち早く核武装し、イスラエルも事実上核武装している事は周知の事実であったが、それ以上の核兵器の拡散は、防ぐ事が出来ていた。

この時代であったならば、日本がいたずらに核武装に走る事は、明らかに国益に反していただろうし、日本の安全の為に核武装を考える必要は全くなかった、と言ってもよい。

言いかえれば、フィクションとしての「アメリカの核の傘」は存在する事になっていたし、そ のフィクションを多くの人々が受け入れる限りにおいて、フィクションは又、現実でもあった。

 そして米ソ冷戦時代においては、我々はソ連及びその周辺の共産国の脅威だけに関心を集中していれば良かったのである。
この時代、特にニクソン訪中によってソ連の脅威に対する米中の戦略的提携が存在した当時は、中共の核兵器はそれが未だ、技術的に未発達であった事もあり、日本に対しては殆ど脅威ではなかった。
ところがこういった戦略環境は全く一変してしまった。

 まず第一に、現在の国際環境においては、日本にとってもアメリカにとっても、最も警戒すべき脅威はソ連からではなく、中共(チャイナ)から発している。
中共の軍事拡張主義と覇権主義が日本にとっては眼前明白の危険である。
そればかりではなく、アメリカにとってもチャイナの脅威が最も現実的なものであり、それは他の東アジアの民主国家にとっても同様である。
(※これについては詳しく後で述べるが、今や米中間には核の相互確証破壊が成立してしまっており、アメリカの日本に対する核の傘は存在し得ない状況となっている。)

 第二に、核兵器の拡散が現実に既に始まってしまっている。
インドに対抗してパキスタンは既に核保有国となったし、北朝鮮が核兵器とまでは言わなくても、「核爆発装置」を手に入れた事は確実視されている。

これに刺激されて、更にイランが核兵器開発をし続けている事も周知の事実である。
サウジアラビアやベトナムやシリア、トルコ等の国々も皆、核武装に積極的な関心を示している。
特に日本にとっては、アメリカが北朝鮮の核武装を防げなかったし、それを放棄させる事が出来ない、という事実は圧倒的に重要である。

 このように客観的な戦略状況が変わってしまった以上、1991年のソ連邦崩壊まで有効であった日本の国防原則は、根本的に再編しなければならないのである。


■ 米中で成り立つ相互確証破壊

 やや複雑かもしれないが、以下で、米中間には既に相互確証破壊の現実が存在しており、それ故にアメリカの日本に対する「核の傘」は存在しない事を論証してみよう。

 まず、相互確証破壊(Mutual Assured Destruction:MAD)の論理とは、何だろうか。

 今、チャイナがアメリカを滅ぼす為に核兵器による先制攻撃を行なった、としよう。
チャイナによるアメリカに対する核第一撃(Nuclear First Strike)である。
この核第一撃が完全に成功して、アメリカ国民の過半数が死に絶える事があっても、アメリカは反撃能力を備えている。
つまり、地下のミサイル・サイロに格納したICBMや、潜水艦に搭載したSLBMがチャイナの核第一撃をサバイバルする事が出来るようになっている。
そこでアメリカはこれらの核戦力を用いてチャイナに対して報復を行なう事になる。
つまりアメリカによる核第二撃(Nuclear Second Strike)である。
この核第二撃によって、チャイナも壊滅的な打撃を受ける事になる。

 これはアメリカがチャイナに対して核第一撃を行なった場合でも、同様の筋道を辿る事になる。
つまり、どちらが核の先制攻撃を行なっても、最終的には自国を破壊してしまう事になる。
共倒れである。
核戦争に関わる両国が共に確実に壊滅してしまうので、この状況を「相互確証破壊」と呼んでいる。
英語で略称して「MAD」と言うが、これは「狂気」という意味でもある。

つまり相互確証破壊は「狂気の論理」であるという、掛け言葉にもなっているのである。

 この相互確証破壊の論理はアメリカとロシアの間にも存在しているし、アメリカとチャイナの間にも存在している。

それ故に、指導者が合理的な思考をする限りにおいては、これら両国は核第一撃を用いる事が出来ない。
核先制攻撃に成功しても、自国が壊滅してしまうからである。

 それ故に相互確証破壊の論理が成立する二国間では、核の安全が存在している事になる。
分かりやすく言えば、お互いに核兵器を向けあったまま、睨めっこをしている状況である。
核兵器による「恐怖の均衡」が成立している状況である。


■ チャイナの軍拡は「核の傘」を破った

 相互確証破壊とは、以上のようなものであるが、問題は、この相互確証破壊の論理が成立しない周辺国に生じて来る。
かつては、チャイナは核一撃力は持っていたが、アメリカに対して核第二撃力は保有していなかった。
つまり、SLBM(潜水艦搭載の戦略核ミサイル)の開発が出来ていなかったのである。

 この時代であれば、チャイナの日本に対する核の脅威に対して、アメリカの「核の傘」は論理的には成立する事が出来た。

例えば、チャイナが日本に対して核攻撃を行なう。
これに対する報復としてアメリカがチャイナを核攻撃する。
しかしチャイナは核第二撃力を保有していないので、アメリカに対して核兵器で報復をする事が出来ない。
こういう状況であれば、アメリカが国家意志を発動しさえすれば、日本を核攻撃したチャイナに対して、報復をする事は出来た訳である。

 また、チャイナが日本とアメリカに同時に核攻撃をした場合でも、アメリカはチャイナに対して核第二撃力で報復する事が出来る。

このような推論が成り立つ限りにおいては、チャイナが日本に対して核攻撃をしてこない事が保障出来たのである。
これがアメリカの日本に対する「核の傘」と言われているものの内実である。

 つまり、アメリカが日本に提供する「核の傘」は、チャイナが核第二撃力を保有していない事を前提としてのみ、成立するものである。

ところがチャイナは、長年の開発努力によって既に「巨浪?号」等のアメリカ大陸を射程圏内に収めるSLBMを開発してしまった。
つまり核第二撃能力を既に手にしてしまったのである。

そうである以上、アメリカの日本に対する核の傘は、論理的に存在し得ない事になる。

「チャイナが核第二撃力を持っている状況下でも、アメリカの日本に対する核の傘が存在し得る」と主張したら、それはどんな事を意味するのであろうか。
それはこういう事である。

 チャイナが日本に核攻撃を行なう。
それを見たアメリカがチャイナに向けて核攻撃を行なう。
その報復としてチャイナはアメリカ本国に対して自らの核第二撃力の報復を行なう。
当然、アメリカ本国は壊滅的な打撃を受け、少なくとも数千万人の死者が発生する事であろう。
この状況が有り得るならば、「チャイナの核第二撃能力」と「アメリカの日本に対する核の傘」は両立し得るのである。

しかし、どの国の指導者が、既に滅んでしまった友好国の為に、数千万人の自国民の生命を犠牲にする事が出来るだろうか。
現実的な想定としてはそれは有り得ない。

そのような決断をするアメリカ大統領がいたとすれば、彼は国に対する裏切り者と見なされるだろう。

 そうである以上、常識の論理の範囲では、今日もはや、アメリカの日本に対する核の傘は存在していないのである。
それは単に「言葉として」しか存在しない。

それを信じる日本人がいるとすれば、よほどの脳天気かアメリカ指導者の狂気を信奉している者であろう。

 言いかえれば今日、「アメリカの核の傘」は、アメリカ国民数千万人の命の代償によってしか、成立し得ないのである。
日本側からアメリカの核の傘の保障を要求するとは、自らの国防努力の不作為を棚に上げて、「いざという時には数千万人のアメリカ国民は、無条件に日本の為に命を捧げるべきだ」と主張しているのに等しいのである。

こんなに無責任で傲慢な要求が有り得るだろうか。

 日米関係が真の友好に基づく、有効な同盟関係となる為には、同盟が、数千万人の命の代償等というトンデモナイ前提に基づくものであってはならない。
当然の事であろう。

このようなジレンマから脱して日米関係を健全な基礎の上に築くには、日本が自主核武装を するしかないのである。


■ 民主国家の核はアメリカも認める

 日本の自主核武装を論ずる場合、常に提議される疑問は「アメリカがそれを容認するか」という問いである。
これに関しては、アメリカの中では様々な考えがある事を前提としても、筆者は、今日では「容認する」と答えられる。

 現実に即して言えば、軍事的なリアリスト(共和党と民主党の両党に存在する)の間では、答えはYESである。
一部の極端なリベラル派、親中派、反日派は明らかに反対するであろうが、日本をアメリカの重要なパートナーと考えている指導者の大部分は日本の核武装を肯定せざるを得ない。

「せざるを得ない」と書いたのは、彼らは日本に対して核武装をしろ、とは恐らく積極的には主張しない。

しかし日本側が、「健全な日米同盟の発展の為には、日本の自主核武装が必要である」と主張すれば、彼らはその日本の主張を肯定せざるを得ないからである。

 そもそも日本の核武装を論じようとする日本人が、アメリカがそれを肯定するか否定するかを気にしているというのは、原則的に陳腐な事である。
アメリカが否定して来るとすれば、いかにしてアメリカを説得するかを考えるのが真の愛国者の道である。
しかし今日幸い、戦略環境が大きく変わり、まして北朝鮮まで核保有に手をかけた状況では、アメリカは友好国日本の核保有に対してNOという事は出来ないのである。

「日本は民主国家である」とアメリカに認識されている。
その民主国家が堂々と国民の議論と法的な手続きを経て核武装しようというのであれば、いかなるアメリカ人の政治家といえども、表立ってはこれを否定する事は出来ない。

 私も何人ものアメリカの政治家や外交関係筋に日本の核武装についての彼らの態度を打診したが、最大公約数の答えは、
「民主国家の核武装は北朝鮮の様な、ならずもの国家の核武装とは全く異質である。
日本人が国民的議論を経て核武装を決定するならば、これをアメリカは否定する事は出来ない」
というものである。

日本核武装を歓迎する事は出来なくても、否定する事は出来ない、というのがアメリカの常識である。

 確かにアメリカの指導者の多くは、日本がいつまでもアメリカにとって都合のよい存在であってほしいだろう。

しかし同時に彼らは日本人が独立と名誉を重んじる国民である事も知っている。
それ故にいつまでも、日本がアメリカの属国のような立場に甘んじられない事も知っている。
だから、日本がより成熟した同盟関係の構築を求めるならば、日本の核武装はその為のコストであると、現実的に見なしているのである。

 さらにいえば、軍事的リアリストの中でもネオコンなどのタカ派の人々は、むしろ日本が核武装に進み、国防努力を高める事によってしか、今後の機能的な日米同盟は成立し得ないとさえ考えている(この点に関しては、日高義樹氏の「米国は『日本の核武装』に異論なし」『VOICE』2011年3月号参照)。


■ コートに落ちたままのボール

 日米関係に関して論ずる際に、忘れてはならないのが2000年に発表されたアーミテージ・ナイ・レポートとその続編である。
この2000年の通称「アーミテージ・レポート」では、アメリカの日米関係に携わる民主・共和両党の専門家が、「日本をイギリス並みの同盟国として扱う」という提案を日本に対して投げかけて来た。

この提案に対して実は、日本側は国家として責任ある答えをしないままに今日に至っている。

レポート執筆に関わった複数の人間から聞いたところによれば「イギリス並みの同盟国としての扱い」とは、これ以上は考えられない、日本に対する最高の提案であり、これを日本人が拒否するならば、日米関係の未来は有り得ない、とまで彼らは考えていたのである。

 にもかかわらず、個人的に様々な論評は出たが、日本側がアメリカに対して超党派の委員会を作り、意見をまとめて応答するという事は終に無かった。

ボールは日本側のコートに落ちたままになっている。

アーミテージ・ナイ両氏を筆頭にレポート執筆関係者が大いに落胆した事は想像に難くない。

 行間を読めば、イギリスは核保有国である。
アーミテージ・レポートの中には「日本の核武装を歓迎する」とは書いていないが、イギリス並みの同盟国という言葉が意味するところは深長である。
同レポートの骨子は、日本が共同防衛により大きな負担を担うならば、それに応じて日本の独自の判断や自主性を尊重する、という事である。
日本はこのアーミテージ・レポートの提案に対して、積極的に新しい日米関係の構築を提案していくべきである。


■ 日本は真の「ニュー・ノーマル」へ

 時にアメリカは、特に経済問題においては無理な要求をしてくるが、それに100パーセントYESと答える必要は全くない。

例えば現在、米オバマ政権は日本のTPP加盟を積極的に働き掛けている。
しかしTPPに関してはアメリカ国内でも反対意見が多い。

アメリカが一丸となってTPPを日本に強制しようとしている、というのは誤りである。

一般に今日のアメリカでは、行きすぎたグローバリズムに対する反省が拡がっている。

 アメリカの国益、特に多国籍企業ではなく、中産階級や貧困層の利益を重視すべきである、とのアメリカ世論がリーマン・ショックの後は圧倒的になっている。

TPPはアメリカの多国籍企業には確かに利益になるが、農民を含む勤労アメリカ国民一般にとってはむしろ、彼らの利益を害するところの方が多い。


 これを象徴するような事件が最近起きた。
共和党の中でも極端な草の根保守派であるリバタリアンのロン・ポール下院議員と、従来極左と見なされて来た市民運動家のラルフ・ネーダー弁護士が、反グローバリズムの旗のもとに共闘を宣言したのである。
両氏はWTOからの脱退は元より、既に締結したNAFTA(北米自由貿易協定:アメリカ・カナダ・メキシコを市場統合する協定)からの離脱まで主張しているのである。

自由貿易一辺倒で推進して来た貿易政策が、実はアメリカ国民の利益になっていないという反省が、ここには顕わである。

 また、両者は海外での米軍の戦闘行為の即時中止と、海外の米軍基地の全廃をも訴えている。
これがアメリカ国民のコンセンサスとして、即時実施される事はないだろうが、アメリカの経済力が、相対的にではあるが徐々に衰退しつつあるのは確かであり、イデオロギーの問題ではなく、予算上の問題から、アメリカ軍は海外へのコミットメントを減らさなければならない状況にある。
アメリカの経済力・軍事力が絶対的なナンバーワンの地位から相対的なナンバーワンの地位へ と滑り落ちつつあるのは確かである。

 未だにアメリカの力を、特にその軍事力を見くびる事は許されない。
それ故に日本が友好国としてアメリカとの同盟関係を築いていく事は日本自身の国益の為にも勿論、必要な事である。
しかし衰退しつつあるアメリカに、いつまでも頼り続ける事は出来ない。

「安保タダ乗り論」は60年代から批判の的であったが、今やアメリカの経済力の衰退から、アメリカに防衛を頼り続ける事は既に、出来なくなっているのである。

これが新しいリアリティーであり、また最近流行の経済用語を使っていうならば、「ニュー・ノーマル」(新常識)でもあるのだ。

                        (了)


■ お知らせ:撃論ムック・リニューアル号、好評発売中!
 撃論 富国強兵号 vol.1「いまだ放射能で滅んだ国は無し、原発よりも危険な中国に備えよ!」 (OAK MOOK 377)
 http://www.amazon.co.jp/dp/477551685X

   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

《詳細・内容紹介》

【復興と再生の年、5年目を迎えた『撃論』がリニューアルして日本の安全を問う!】

 眠り続けていた日本がようやく目覚め始めようとしている。
 そのきっかけとなったのが、昨年秋の尖閣諸島での中国武装漁船テロ事件であり、今年3月列島を襲った未曾有の大震災ではなかったか。
「領土問題なんて話し合いで解決できる」「平和を愛する諸国民の公正と信義を信頼しよう」 もはや、そんな寝言が通用する時代は過ぎたのだ。
「暴力装置」と呼ばれた自衛隊を感謝の涙で迎える被災地、「日本頑張れ」と世界中で振られる日の丸を目にして、われわれは何を思うか。
 世界に愛される日本、それは戦う日本である。
 内に大震災、外からは隣国の脅威……新生撃論・第一弾は、安全保障と国防に切り込む!
 連載陣も一新して強力新連載に加え、豪華かつユニークな執筆陣が情報戦からアジア経済、 エネルギー問題まで、独自の視点で解析するリニューアル第一号。

 http://www.amazon.co.jp/dp/477551685X

● 目次
【カラー】自衛隊戦争ドクトリン
■中川八洋 <憂国の緊急寄稿> "風前の灯"尖閣列島と国防忘却の日本
■藤井厳喜  新しい"リアリティ"の時代へ ─ 21世紀、日本の選択 震災日本だからこそ考える改憲と核
■佐藤守  元空将・佐藤守の言論スクランブル ─ この危機にこそ、目を離すな
■石破茂自由民主党政務調査会長 <特別インタビュー>震災と原発事故から考える国防体制
■井上和彦 水面下の国防体制構築に原子力は不可欠の時代だ ─ 日本原潜配備計画
■仲間均石垣市議会議員 <特別寄稿> 我が尖閣上陸の記
■桜林美佐 「武器輸出3原則」緩和だけでは解決できない特殊な事情 ─ 防衛産業を理解すれば国防が見える
■元航空幕僚長・田母神俊雄×評論家・渡部昇一 <緊急会談>「日本人が今、日本のためにできること」
■家村和幸 自衛隊は何を守り、何と戦うのか ─ 革命政権に文民統制される『暴力装置』の危うさ
■宮崎正弘 中東民主革命の波及を恐れる中国共産党 ─なりふり構わぬ中国政府のネット規制
■土屋大洋 機密メールやデータがこっそり読み盗られている!? ─深く静かに潜航する中国のサイバー攻撃
■酒井信彦 侵略性の根本にある中華思想 ─ 全ての民族は「中華民族」という論理
■イリハム・マハムティ(ウィグル独立運動家) <特別インタビュー>国を奪われるということ
■大高未貴 アジアの諸国民から生声リポート ─中華を大包囲するアジアの反中親日感情
■アリムラヨシヒロ 「アジアの連帯」を唱えて再び走る亡国への道─支那幻想に狂い続ける現代のアジア主義者
■三橋貴明 インフレとバブルに怯える脆弱な足腰を解剖!─ 世界経済を牽引する「大躍進中国」の真っ赤な嘘
■青山千春 間近に迫る商用化で資源大国への道を開くか─日本近海に眠る膨大なメタンハイドレード

◎column
■浄閑寺せつ  「如果日本戦勝了日本」に読む漢化の恐怖 ─中国人とは何か?
■若杉大  ・泥沼という戦い方  ・空からエネルギーが降ってくる

◎連載
■西部邁 国家の危機を迎えた日本人に近代主義の危うさを問う「非常の思想」
■桜林美佐 自衛隊第五種接近遭遇リポート「百年の剣を磨く」
■岩田温 「たしなみとしての岩波文庫」
■但馬オサム 「但馬流異色日本人列伝 ~中村天風~」
■杉原志啓 「書行無常」

http://www.amazon.co.jp/dp/477551685X 




※ 藤井厳喜へのメッセージ、講演や仕事等の依頼も、以下アドレスまでお願いいたします。

ケンブリッジ・フォーキャスト・グループ事務局e-mail : info.cfg.future@gmail.com

★ 【 Cambridge Forcust Group of Japan.Co 藤井厳喜チャンネル】
   http://www.youtube.com/user/zingrace1213 (登録自由)


↑ 6月24日・いよいよ新刊発売決定!!






↑ 「無制限戦争(超限戦)」をまとめたこの著作は、情報戦争とアジア情勢の教科書として長く使える形を想定して書いたものです。通常の単行本3冊分のボリュームですが、是非、ご参照ください。




 ↑ 好評発売中!是非、御感想をお寄せ下さい♪ 
「日本はニッポン!」特設ページ( http://www.sowa.ne.jp/nippon/ )も出来ました。



★ 品切れしておりました、「永久国債の研究」が、増刷されました!! 


私の超・御薦め新刊です。↓↓

↑↑ 今、注目の電子書籍の実情、出版業界・コンテンツ産業の未来を考察できる最も分かりやすい参考書だと思います。実はこの本の中で、私の事も、本ブログの話も出てきますw お楽しみに…。