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映画「ウォール・ストリート」

投稿日:2011,02,06

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 昨夜、久しぶりにレイトショーで、映画「ウォール・ストリート」を観に行って来た。




 結論から言うと、100点という訳にはいかない、80点の出来の映画であると思う。

一般の映画としては、特に金融に興味のない人がみても、まぁ、面白い映画ではあるだろう。

 実は、私が期待していたのは、2008年9月のリーマンショック前後のアメリカ金融界の生々しい動きがかなり克明に描写されているのではないか、ということだった。
その点では、映画はだいぶ期待外れであった。

住宅バブルと、それに連動した金融バブルの発生と崩壊、またCDSという金融商品の危険性等が折り込まれてはいるが、金融界の崩壊を詳細に描いている訳ではない。

焦点はあくまで、主人公のゲッコーと、その娘のフィアンセの人間ドラマである。

 TVの映画宣伝の売り文句通りに、「この2時間は貴方の資産(Assets)になる」かは、「?」である。


 映画を観る前は、私はこんなシナリオを予測していた。
刑務所を出てきた主人公のゲッコーが、ウォールストリート(米金融界)全体への復讐を果たす為に、知力を尽くし、裏技を用いる。
 そのウォールストリート崩壊の舞台となるのが、2008年9月のリーマンショックである。
つまり主人公は、崩壊させる為に、敢えて、バブルの火に油を注ぎ、投機を煽りに煽って、マーケットの自己崩壊を招く、というシナリオである。

 ところが映画の実際のシナリオは、これ程、ダイナミックなものではなく、少々肩すかしをくった感じであった。


 ただし、今、まさにアメリカで第2次ITバブルが発生しようとしている、その矢先の映画公開というのは、抜群のタイミングである。

人間ドラマを除いたこの映画のメッセージは、どうやら「バブルは避ける事が出来ない」という事であるらしい。
「人間は愚かな生き物で、同じ間違いを繰り返し、繰り返し行なう。」

それが人間の狂気(Insanity)の内容である、と映画の副主人公の若い証券マン、ジェイコブ・ムーアが語っている。

これが結論であるとすれば、まさに今、おきつつある新バブルを予告するような映画でもある。

 実際に、今、ワシントン、ウォールストリート、シリコンバレーのトライアングルで仕掛けられつつある第2次ITブームは、実はこの映画以上に醜悪であり、凄絶ではないか、というのが私の印象だ。

 映画の中では、主人公ゲッコーは、「次のバブルは、グリーン・エネルギー(代替エネルギー)だ」と度々発言しているが、そうはならずに、次のバブルの主人公は、Facebookに代表されるSNSが中心になるはずである。

 年末年始のアメリカの取材や、帰国してからの情報分析を通じて、益々この予測に私は確信を持ってきた。

 だとすれば、うがった見方だが、この「ウォールストリート第二作」自体が、来るべきバブルを盛り上げる宣伝の一環とも考える事が出来る。


 この映画の中で、バブルの古典的な実例として、オランダの「チューリップ・バブル」が挙げられている。

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金融取引の仕組みがどんなに複雑になっても、人間の心理には、一定の法則があるようで、全てのバブルの発生と崩壊の力学は、このチューリップ・バブルに典型的に現れている。
ウォールストリートには、「懲りない面々」が山ほどたむろしている。
ネタさえ揃えば、常に、バブルを演出するのが金融界である。

やがては崩壊すると知りながら、又、再びバブル経済を演出するに違いない。


 前回の「ウォール街 (特別編) 」は、80年代のアメリカの金融バブルの最中に公開され、その直後にブラック・マンデーが起きたので、その事も有り、大ヒット作となった。



やはり第一作のインパクトが強烈で、第二作目が決して第一作目を上回る結果にはならなかったと思う。

 但し、マイケル・ダグラス演ずる、ゴードン・ゲッコーは相変わらず、魅力ある悪役である。



彼は後悔し、善人になったと想わせながら、やはり全く後悔していないグリード(Greed・欲望)の鬼である。

 私などは寧ろ、そこに人間の業と同時に、信念や強さを感じてしまう。

悪人はやはり、喰いあたらため等せずに、一貫して悪人である事の方が美しい。

皮肉な言い方をすれば、日本にゲッコーのような開き直った悪人が一杯多く出てきた方が、世の中ははるかに面白くなるだろう。

やっぱり、孫正義や堀江隆文は、全然、魅力のない中途半端な悪人である。


 追記1:
 ウォールストリートを舞台にして面白い映画を創る事が難しくなっている理由の1つは、AI化である。
 個々の人間が判断を下すのではなく、AIの判断が多くの投資家やトレーダーを動かすようになってきている。

 これは1987年の「ウォールストリート1」と今回の「ウォールストリート2」の背景の大きな違いだろう。
 ある意味で、業界のAI化の実体は反映されていると言ってよいだろう。


 追記2: 「ウォール街 (特別編) 」で描かれた金融バブルは、87年の所謂、ブラック・マンデーで終焉した。
 この後、日本の株式市場は、更に89年末まで2年余のバブル経済を満喫するが、やがて崩壊する。
ブラック・マンデーをいち早く乗り越えたアメリカでは、90年代、クリントン政権の時代(93年1月から2001年1月)、特にその後半にITバブルが発生した。

 シリコンバレーが持て囃され、IT株が急上昇したが、このブームもやがて終了し、クリントン政権末期は丁度、このバブル崩壊過程であった。

 ITバブル崩壊の中で、ホワイトハウスを引き継いだのが、ブッシュ・ジュニア政権であった。
この政権は、株式ではなく、住宅価格高騰のバブルの波に乗って、2004年の再選を果たした。
しかし、06年夏からの住宅価格の下落とこれと連動した2008年9月のリーマンショックによって、バブル崩壊の中でホワイトハウスを民主党のオバマ大統領に明け渡したのであった。

 ブッシュ期のバブル崩壊に苦しむオバマ政権は、今また第2次ITバブルの演出を画策している。


 追記3: ちなみに「ウォールストリート2」では、金融プロ達のマッチョ文化やスピード狂ぶりを取り上げているが、この点で参考になるもう一つの映画が「エンロン 巨大企業はいかにして崩壊したのか? デラックス版 [DVD] 」である。



 エンロンの起業、発展と崩壊の物語は、バブル経済を研究するものにとっては、格好の事例を提供している。



 【お知らせ】
 私のアメリカ・ウォッチングの記事が、週明け、8(火),9(水),10(木)に、夕刊フジのコラム・コーナーで連載されます。
 「日本はどうなる?オバマ米国の豹変(仮題)」で、今、仕掛けられている新たな動きについて、簡単に解説しました。

 是非、御覧ください。




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