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私は有料制の会員制情報誌を1982年以来、発行し続けている。
以下に紹介する記事は、昨年、有料情報誌ケンブリッジ・フォーキャスト・レポートに発表した論文からのものである。
現在、最も注目されているエコノミストであるヌリエル・ルービニ教授のバック・グラウンドを紹介したものである。
ルービニ教授は今後、益々、注目されてゆくエコノミストである。
しかし彼の発言の真意を読み説くには、彼のバックグラウンドを理解する事が不可欠であろう。
既に発表から半年の時間が経過したので、有料情報誌の論文から一部を敢えて公開する事も、購読者に対する背信行為にならないであろうと信じて、そうさせて頂く。
(別の観点から、拙著『日本はニッポン! 金融グローバリズム以後の世界
』末章でも解説したので、そちらも参考にして頂きたい。)
ルービニ教授は未だに日本では、一般的な有名人とは言い難い。
しかし彼の発言は世界的に大きな影響力を持っている。
イラン生まれのユダヤ系であるルービニ教授は自らが称するように、「グローバル・ノーマッド(地球的遊牧民)」である。
ルービニ教授の特異性は、そのバックグラウンドを知って始めて理解できるものである。
以下を参考にして頂ければ幸いである。
注目される経済学者、ヌリエル・ルービニ教授のバック・グラウンド
要旨: ルービニ教授は「グローバル・ノーマッド(地球的遊牧民)」としてのユダヤ人である。
彼のアイデンティティーの基本はここにある。
● 彼のTwitterのアドレス; Nouriel Roubini http://twitter.com/Nouriel
1) リーマン・ショックを2年前に予測した人物
最近、ヌリエル・ルービニNY大学教授が、アメリカを中心に世界的に注目されている。
ルービニ教授が有名になったのは、2006年9月にアメリカの住宅価格下落を引き金とする大規模な金融危機が到来する事をIMFに対して警告し、この予測がズバリ的中したからである。
アメリカの住宅市場がバブル化しており、それが崩壊するという予測は、既に2005年に表していた。
2008年9月のリーマン・ショック以降、「世界的金融危機をいち早く予測したエコノミスト」として、同教授は多くの注目を集めるようになった。
今や、欧米のメディアでは、ルービニ教授は経済予測の第一人者と見なされており、今日、同教授は世界で最も影響力のあるエコノミストである、と言っても決して過言ではないであろう。
アメリカの外交政策専門誌『フォーリン・ポリシー』は、ルービニ教授を世界で最も影響力のある100人の知識人の第4位に上げている。
ルービニ氏は純然たる学究肌の人物ではなく、現実の経済政策運用にも関係を持っており、多くの国の中央銀行や財務省にも広範な人脈を有している。
同氏の著作が昨年、日本でも刊行された。
『大いなる不安定
(CRISIS ECONOMICS)』ヌリエル・ルービニ、スティーブン・ミーム・共著、ダイヤモンド社・刊 2100円
※ 共著者のミーム氏は歴史学者である。
2) ミズラヒ・ユダヤ人としてのグローバルな視野
ルービニ氏の発言や行動をどのように評価するかは、今後の日本企業や日本政府にとっても重要なファクターになってくる。
同氏の思考経路を理解する為に、彼のバック・グラウンドを明らかにしてみよう。
ルービニ氏は自らを「グローバル・ノーマッド(地球的な遊牧民)」と称している。
彼は、確かにその履歴からして、グローバル・ノーマッドと呼ばれるにふさわしい人物であるが、最も注目すべきは、彼がミズラヒ・ユダヤ人であるという点である。
▲世界中のユダヤ人は、その出身地から主に、3系統に分類されている。
1.セファルディ、2.アシュケナジ、3.ミズラヒ、の3系統である。
1.セファルディは、西暦紀元前1世紀、スペインに移り住んだユダヤ人達の子孫である。
彼らは、コロンブスがアメリカ大陸に到達した1492年発令されたにスペインからの追放令により、地中海全域に離散し、その多くはトルコ帝国に移住する事となった。
コロンブスの第1回航海に参加した乗組員の約3分の1は、新大陸に新天地を求めようとしていたセファルディであったと言われている。
スペインを追放され、アジアに向かった一群のセファルディが存在した。
このセファルディの中には、後に大財閥となったサスーン家やカドゥーリ家がある。
彼らは、イギリス帝国の東洋進出と共に、インドを経てシンガポール、上海、香港に拠点を築いて財を成した。
セファルディの語源は、ヘブライ語で「スペイン」の事を「セファラド」と呼んだ事に発している。
2.アシュケナジとは、西暦9から10世紀にパレスチナからヨーロッパ、主にドイツを中心とする中央ヨーロッパへ移住したユダヤ人の末裔である。
彼らは14世紀以降、主に東ヨーロッパへ移住し、19世紀の半ば以降、北アメリカにも進出する事になる。
今日、アメリカに在住するユダヤ人の多くはアシュケナジである。
ちなみにアシュケナジとは、ヘブライ語で「ドイツ」を意味する。
また彼らの間で日常語として広汎に話されているイディッシュ語は、ドイツ語圏のユダヤ人が造り出した言語であろう。
3.ミズラヒは単純化していえば、イスラム教圏に拡散したユダヤ人である。
ヘブライ語で「東」を意味する言葉である。
彼らは原住地のパレスチナ地方から、東は現在のチリやイラク、イラン、アフガニスタンに渡る地域に拡散した。
名前に反して、西に向かったグループもあり、彼らは現在のモロッコ、アルジェリア、リビアなどの地中海南部地方に展開した。
一部はイエメンや南インドにも移住している。
ミズラヒは11世紀以前には、世界のユダヤ人人口の半分を占める程の多数派であったが、それ以降、勢力が衰退し、今日では3系統のうち、最も小さな集団となっている。
ミズラヒの居住地域は今日、その大部分がイスラム教圏となっている。
1948年のイスラエル建国以降、これらイスラム諸国では、ユダヤ人迫害が激しくなり、その大部分がイスラエルへ亡命している。
今日、この地域におけるミズラヒ共同体は極めて衰退しており、その中の最大のものが意外な事にイランに存在する約3000人のグループである。
ちなみに、イランの国会には、1名のミズラヒ・ユダヤ人の国会議員が存在する。
1979年のホメイニ革命以前、即ち、パーレビ国王時代に、イスラエルとイランは極めて友好的な関係にあった事は忘れてはならない。
▲ルービニ教授は、この珍しい、ミズラヒ・ユダヤ人の1人である。
彼は、1959年にトルコのイスタンブールでイラン系ユダヤ人の両親から生まれている。
2歳の時、家族はイランのテヘランに移住し、その後、同氏は大学を出るまでの教育を主にイタリアで受けている。
彼はイタリアのミラノにあるボッコーニ大学を1982年に卒業し、その後、ハーバード大学で経済学博士号を取得しており、現在はアメリカ市民である。
しかし、彼はその間、1年間、エルサレムのヘブライ大学でも勉学をしている。
彼はヘブライ語、英語、イタリア語の他に、ペルシャ語(イランの国語)にも堪能である。
その経歴からすれば当然のことであろう。
▲そもそもルービニ氏は、発展途上国の経済の専門家である。
彼がリーマン・ショックに始まるアメリカ金融危機を予測できたのは、それ以前における発展途上国経済のバブル発生と崩壊のパターンをよく研究していたからである。
つまり、「過剰な外国からの借り入れによる経済のバブルが発生し、そして崩壊する」という発展途上国の失敗を、より巨大な形で繰り返そうとしているのがアメリカ経済である。
ルービニ教授はそのような単純なアナロジーを直感して、アメリカ経済の破綻を予測したのであった。
▲先進国経済のみに偏らない、途上国経済をも見渡す広い視野が、同氏の予測の根底を支えている。
これは正に、ミズラヒ・ユダヤ人としてのグローバル・ノーマッド的な視野が彼の長所となっている事を物語っている。
3)米・民主党系エコノミストとしての強み
ルービニ氏の強みの1つは、氏がアメリカ民主党に広い人的ネットワークを持っているところである。
彼はIMFからFRB、世界銀行、更にイスラエル中央銀行等で幅広く経済政策の実践的な研究を行なってきた。
また、米・ビル・クリントン政権の時代に、シニア・エコノミストとして大統領経済諮問委員会に加わり、後に米財務省に移っている。
この時に、国際問題担当財務次官であったティモシー・ガイトナーのアドバイザーとなっている。
ガイトナーが現財務長官である事は言うまでもない。
彼と民主党クリントン政権を繋いだのは、ハーバード大学のラリー・サマーズ教授とジェフリー・サックス教授の2人である。
共に、ユダヤ系で民主党支持のエコノミストであり、現実の経済政策とも深い関わりを持っている。
ルービニ氏自身、この2人が自分のロール・モデルであると公言している。
▲ルービニ氏がマスコミの注目を集めている理由の1つには、明らかに、氏が米民主党系のエコノミストであり、現ガイトナー財務長官と親しい事があげられる。
そればかりでなく、彼は自らコンサルティング会社も経営しており、(http://www.roubini.com/)
先進国は元より、発展途上国の中央銀行や財務省関係者にも幅広い人脈を有している。
理論家であると同時に極めてジャーナリスティックなセンスを持ち、極めて行動的な人物である。
統計数字で全てを判断するのではなく、当該国に赴き、その国の雰囲気や現場の感覚を十分に重視しながら判断を下すというのが彼のスタイルである。
加えて、彼はニューヨークでも有名な社交家であり、ジャーナリズムやマスコミとの関係も極めて巧みにマネージメントしている。
これが彼のマスコミ露出度が急上昇してきた陰の理由でもあろう。
▲ルービニ氏は、ユダヤ系ではあるが、ネオコンのような視野の狭いタカ派ではない。
自ら言うように、グローバル・ノーマッド(地球的な遊牧民)として、極めて広い視野を持ち、発想も柔軟である。
イスラエルに居住した事もあり、イスラエルへの忠誠心はあるが、極端なタカ派ではない。
エコノミストとして、コンサルタントとして、アラブ諸国やイスラム教国とのリーダーとも、話し合いの出来る人物である。
そして、発展途上国の現実にも精通している。
今日、グローバルな経済の予測を行なう為には、途上国の経済的現実を熟知している事が不可欠である。
また、米民主党に深い人的ネットワークを持ち、オバマ政権やFRB中枢とも良好な関係にある。
以上のような点を総合的に考えれば、彼がアメリカのマスコミの寵児となった事には容易に納得がゆく。
彼の発言は上記のようなファクターを全て統合した形から生まれて来る。
▲彼がイラン系ユダヤ人を両親に持っており、ペルシャ語に堪能であるというのは極めて注目すべき点である。
イスラエルもアメリカも、今後、長い間、イスラム教諸国とは、好き嫌いに関わらず、関係していかなければならない。
経済面においても、国防面においても、アラブと一線を画しているイラン(ペルシャ民族)とトルコの動向は、極めて重要である。
謂わば、両国に土地勘を持っているルービニ氏の予測や見解は、その意味で今後とも極めて重要になって来るであろう。
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