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2010年年末から1月10日まで、アメリカの南西部からメキシコの経済状況を取材してきた。
そのレポートを2本の動画に収録しましたので、お届けします。
先ず、第一部は、アメリカについて。
YouTube: http://www.youtube.com/watch?v=r8-bu0W8rvU
ニコニコ動画: http://www.nicovideo.jp/watch/sm13318119
ロサンジェルス郊外と、ダラス郊外を取材したが、中産階級の住む新興住宅街に差押さえ物件の看板が乱立している。
この地域の友人を訪ね、経済状況をインタビューしたが、予想以上にアメリカ経済の実体は疲弊している。
実際に家を差し押さえられた人の声も聞く事は出来たが、現オバマ政権に対する絶望と批判の声は日々、アメリカ中に拡大している。
国民の疲弊は即、州や自治体の財政破綻に繋がっている。
自立財政が原則のアメリカでは、不況で税収が上がらなくなると、それが即、自治体の財政危機に繋がり、それが直ぐに公務員の首切りに結果する。
学校の先生や、警察官の数も減らされて、地域社会全体の荒廃が益々進む事になる。
このダメージが、アメリカ社会をボディーブローのように、益々消耗させている。
(デトロイト市では、既に長く町が荒廃し、切り詰められていたにも関わらず、財政難の為に、今年更に、公立の学校が半分に減らされる等、公共サービスのカットが目立つ。)
丁度、私が帰国の準備に取り掛かった1月8日にアリゾナ州のトゥーソンで、民主党の女性下院議員をターゲットにした銃乱射事件が勃発した。
一般の印象とは逆に、民主党のリベラル派で銃規制を強化すると思われていたオバマ大統領は、実は2009年に銃規制を緩和していた。
また、地元アリゾナ州でも2010年に更に銃の携帯に関する規制が緩和され、これが今回の銃乱射事件の伏線になっている。
銃を使った犯罪の蔓延は確かにアメリカ社会の宿痾である。
しかし、銃規制は日本人が考える程、単純な問題ではない。
個人の武装権を基礎に独立を勝ち取ったアメリカでは、個人の自衛権は国家秩序の根底を成す自明の権利であると考えられている。
銃を国民から取上げる事は、アメリカ社会では不可能である。
また、貧困層やマイノリティーの立場からすれば、犯罪から身を守る為に彼ら自身が自己防衛しなければならないという側面も存在する。
犯罪社会になればなるほど、弱者が自ら武装しなければならない必然性も存在するのである。
アメリカの経済社会の衰退の大きな原因が、企業の多国籍化である。
より賃金の安いところで製造を行なおうとすれば、先進国の産業はドンドン空洞化してしまう。
アメリカで起きた現象が、今後、日本を襲う事になるかもしれない。
多国籍化の1つの事例がGMである。
GMの多国籍化を知るよい資料として、マイケル・ムーア監督の「ロジャー&ミー 特別版 [DVD]
」という映画がある。ムーア監督はアメリカの左派、単純な社会主義者であり、私とは基本的な考え方が大きく異なるが、彼のGM批判にはうなずけるところが大いにある。
日本人の観点からすれば、トヨタがGM化しない事を望むが、そうならないという保証はどこにもないのである。
第2弾《メキシコ篇》
YouTube: http://www.youtube.com/watch?v=cYuurGQrX00
ニコニコ動画: http://www.nicovideo.jp/watch/sm13320860
メキシコの経済は全般的にはかなり好調である。
インドやブラジルなどと同様に、経済成長が順調に進展している発展途上国の1つがメキシコである。
かつてはドルに対して、常に弱い通貨であったメキシコ・ペソも、最近は対ドル相場では強含みである。
ラテン・アメリカ全体をカバーする工業基地として、メキシコ経済は浮上しつつある。
この為、先進国からメキシコへの投資も順調に増大している。
これを典型的に物語るのがメキシコにおける自動車生産である。
2010年全体では、メキシコの自動車生産台数は対前年度比で50%も増加している。
12月には、対前月比で17%の増加であった。
生産台数の8割以上が輸出にあてられ、メキシコにとっての貴重な外貨を稼ぎだしている。
アメリカでは落ち目のウォールマートもメキシコでは急速に成長している。
新しく誕生しつつある中産階級をターゲットにしたウォールマートの市場戦略はメキシコの国情にあった適切な成長戦略となっている。
順調に発展するメキシコ経済だが、残念な事にメキシコ市場における日本の製造業、特に電器、電子産業の比率は低下している。
日本メーカーに代わって、一番元気があるのが三星電子やLGなどの韓国メーカーである。
例えば、メキシコシティーの国際空港では、無料のインターネット・ステーションは全て三星電子の提供であり、三星の広告サインが林立している。
また、空港各所の液晶ディスプレイではLG製のモノが圧倒的に目立つ。
またデパートや量販店に足を向けても、日本メーカーの製品は片隅にあり、大きな売り場面積を占めているのが韓国メーカーの製品である。
1月6日からアメリカのラスベガスでは恒例のコンシューマー・エレクトロニクス・ショーが開かれていた。
アメリカ最大の電機・電子の見本市であり、バイヤーはアメリカのみならず、中南米マーケットからも参加して来る。
この見本市に参加した日系メーカーの現地営業部員の意見を聞いてみたが、やはり韓国メーカーの勢いが日本勢を大きく凌駕していた。
恐らくメキシコ市場のみならず、中南米諸国や東南アジア等でも、同様の現象が起きているのである。
グローバル・マーケットを見た時、新しい中産階級として登場して来る、所謂、「ボリューム・ゾーン」の約20億人程の人口を考えれば、日系メーカーの韓国メーカーに対する劣勢は今後の日本経済にとって、大きな不安要因である。
メキシコ経済は順調ではあるが、メキシコを蝕んでいるものに2つの大きな問題がある。
第一は多発する犯罪組織による残虐犯罪であり、第二はメキシコ人の健康を犯している肥満の問題である。
多くの発展途上国においては、貧困こそが犯罪の原因となっているが、この図式は現在のメキシコに関する限り当てはまらない。
経済は順調に成長しているが、この順調な経済が寧ろ、犯罪組織を活性化してしまった感すらある。
メキシコの犯罪組織の主体は、麻薬カルテルである。
アメリカという麻薬や覚せい剤等の違法薬物の大消費地を北の国境にもつメキシコでは、アメリカへの違法薬物の密輸でダーティー・マネーを稼ぐ麻薬カルテルが複数存在し、彼らの組織間抗争が異常に残酷な犯罪を多発させている。
また一般人がこれに巻き込まれたり、また誘拐事件で一般国民が被害者となるケースも多い。
1月7日、8日には国際的観光地として有名なアカプルコ、その他で、数十人もの麻薬カルテル間による死者が発見され、なんとこの内、14体では頭部が胴体から切断されていた。
残念な事に、このような犯罪はメキシコでは稀ではない。
警察組織が麻薬カルテルに浸透されているので、メキシコのカルデロン大統領自身が軍隊を直接率いて、対麻薬戦争を宣言しているが、その実行はあまり上がっているとは言い難い。寧ろ残虐犯罪の増加が目に付くというのが現実である。
メキシコを蝕んでいるもう一つの病が国民の肥満である。
あるニュースで「メキシコがアメリカを追い抜いて世界一」というタイトルのニュースを読んでみたら、何と、国民の肥満度でメキシコがアメリカを追い抜いたという記事であった。
アメリカ人の肥満も大問題だが、メキシコがこれを上回っているというのが驚きである。
確かにメキシコに行って、周りを見渡してみると、肥った人が多い。
日本では太めの私でも、メキシコに行くと中肉中背くらいである。
メキシコは豊かな国ではないが、食料は安くて豊富に供給されている。
最貧層でも、飢えに苦しんでいないというのは、よい事だが、食料品の安さが肥満の一因にもなっているのは皮肉な事である。
発展途上国でありながら、肥満が国民病であるというのは、メキシコ独特の現象ではなかろうか。
これにはアメリカ的食生活の悪影響という事もあるだろう。
アメリカのフォースト・フード・チェーンがメキシコ全土を席巻しているといっても過言ではない。
また、コカ・コーラ―やペプシ・コーラ―などのソフト・ドリンクの飲みすぎもアメリカの悪影響の一つであろう。
順調に成長しているメキシコ経済ではあるが、今後この成長を阻む者があるとすれば、それは何よりも社会全体に蔓延する犯罪である。
あまりに犯罪が多発すれば外国企業もメキシコへの投資を躊躇するようになるだろう。
メキシコでもそうだが、昨年以来、異常気象が世界各地を襲っている。これが各地で食料生産に甚大な損害を与えている。
現在、分かっているだけでも、オーストラリア、ブラジル等の大穀物生産国で、大雨による洪水被害の為、食糧生産が大きく阻害されている。
今年以降、世界的に食料価格は更に上昇してゆくだろう。
TPPへの参加などによって、日本農業の基盤を破壊するのは正に日本国民にとっての自殺行為である。
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