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『2012』は、最近、多くなった「人類破滅」テーマのSF映画である。
■ 『2012』公式サイト: http://bd-dvd.sonypictures.jp/2012/
メソ・アメリカ文明であるマヤ文明の暦が2012年で終わっているという話が全体のストーリーの伏線になっている。
少々、長いけれど、見て損のない映画だと思う。
第一の印象は、9・11同時多発テロ以降の、そしてリーマン・ショック以降のアメリカ人の終末観と崩壊感覚が非常によく表現されている映画である、という事だ。
9・11は、政治的な崩壊感覚をアメリカ人に味あわせたが、直ぐに、対イスラム過激派の戦いに討って出たアメリカは、それなりに自信を回復する事が出来た。
しかし、イラクやアフガニスタンでの戦いが長引くにつれ、再び自信喪失に陥りつつある。
2008年9月のリーマン・ショックから始まり今日に至る、長期の、しかもかなりシビアな経済不況は経済的な崩壊感覚をアメリカ人に味あわせているのではないか。
この映画のCGを使った特撮の見どころは、都市の巨大なビルが次々に崩壊してゆくシーンである。
これはまさに9・11のワールド・トレード・センターの崩壊を思わせる。
これに加えて凄まじいのは、大地に巨大な亀裂が走り、地殻そのものが崩壊してゆくシーンである。
更に巨大な津波が大都市を、そして人間が住む大陸そのものをのみ込んでゆくスペクタクルにも、思わず固唾をのんで見入ってしまった。
こういった崩壊シーンに、リーマン・ショック以降のアメリカ人の崩壊感覚がよく表現されているのではないだろうか。
つまり、自分たちが今まで依存していた安定した社会の仕組みそのものが崩壊してゆくという恐怖感である。
人類破滅のストーリーは、途中から旧約聖書の「ノアの箱舟」の筋書きに類似してくる。
つまり少数の人間が「ノアの箱舟」上の巨大な艦船に乗り込み、洪水に覆われてしまった地球上でサバイバルする、というシナリオである。
やはり西洋人は、キリスト教の「ノアの箱舟」の伝説が忘れられないのであろう。
最後は、ハリウッド映画らしく、人類の再生への希望というところで終わっているのだが、人類の大部分は滅亡してしまうという大悲劇でもある。
この映画でも、いくつかの「ハリウッド映画の御約束」は守られている。
第一に、主人公は平凡で社会の主流からチョット外れた人間だが、いざとなればこの人物がスーパー・ヒーローに変身する。
平凡な人間がヒーローになる、というのもアメリカ人が大好きなストーリーである。
第二に、アメリカ大統領は、如何なるピンチにも動じない立派な「戦う人格者」であるという点である。
この映画の中では、年配の黒人の大統領であるが、彼は「ノアの箱舟」に乗る事を拒否して、国民に真実を知らせ、国家と共に滅んでゆくというヒーローである。
第三に、家族愛の大事さという御定まりのテーマもシッカリ組み込まれている。
娯楽というには、少々シリアス過ぎる映画だが、我々をのみ込みつつある政治的・経済的、そして社会的混乱の巨大さを予感させるようなところがあり、私としては大いに楽しんでみる事が出来た。
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