昼から午後の時間の大部分を費やして、都心部の書店を見て回った。
無制限戦争の視点から見れば、書店は極めて重要な戦場の一部を形成している。
その意味で、書店ウォッチングは私にとっては大事な仕事の一部である。
本日の書店ウォッチングも含め、今年の出版業界のトレンドで気がついた事を以下に列挙してみたい。
1.地方の中堅老舗・書店チェーンの大量倒産、淘汰など。
特に、西日本(関西から西)が顕著。
地方都市の駅前繁華街や目抜き通りにある、その町の住人なら誰もが知っているような有名書店が次々に統廃合されていった。
書店の数は、1996年前後が約2万店で、この時がピークであった。
これ以後、減少を続け、今や1万5000店を切るまでになっている。
やがて数年内には(特にこの2年)、1万店を切る事になるだろう。
一方、書店の売り場面積は、微増しており、出版点数はやや減少しても高止まりの傾向を示している。
要は、本は、多数、出版されるが、本が益々売れない状況になってきている。
売上総額で言えば、ピーク時に書籍・雑誌業界の売り上げは約2兆6000億円あったが、これが、2009年は2兆円を切る事が確実視されている。
そして多くの大手出版社がシナへの進出によってこの苦境を打開しようとしている。
シナ市場への進出が解決策であるというのは全くの幻想なのだが、今のところ、出版人の多くはこの幻想に酔っているというのが現実である。
一つの結果として、シナの厳しい現実を伝える私が書くような本の出版は、大手出版社では益々難しくなってきている。
現実を無視したシナ礼讃本ならいくらでも引く手あまたで出版できるのではあるが…。
2. 既に出版された書籍の絶版・廃刊の勢いが恐ろしい程の速度で進んでいる。
先ず、少し売れないと本が直ぐに絶版になる。(スタート・ダッシュが悪いと後から売れだした頃には、絶版決定後というケースもある)
また、絶版になる本の数も急増している。
どの出版社も、良い本をつくり、ジックリ長期にわたって売ってゆくという我慢が最早、業界構造的に出来なくなっている。
一つの理由に、書店サイドからすると、1日に100点以上の「新刊・話題本」が送られてきて、売り場面積を確保する事が難しい。
それ故に、発売日から2カ月を過ぎると、余程話題になっていなければ、新刊本に淘汰され、書店からはその本は追放されることになる。
何冊かの注文があったとしても、旧い本が最早、平積みされる事はない。
こういったサイクルが、より短い時間で繰り返され、悪循環をなしているのである。
出版社サイドから言えば、次々と自転車操業で新刊本を市場に送り出さなければならない。
その為に、既に出版した本の宣伝は勿論、管理にもコストをかける事が出来ずに、次々と廃刊する点数を増やしてゆく事になる。
不況により、倉庫スペースが縮小リストラされ、直ぐに置き場が溢れてしまう為に、また廃刊処分のスピードだけがUPする。
結論として言えば、ジックリと本を造り、ゆっくりと売る事が出来ない業界構造になっている。
こんな状況では、レベルの高い出版物や、後世に残るような名作を残す事は殆ど不可能である。
著者サイドから言えば、真面目に本を書けば書くほど、経済的には苦しい立場に追い込まれてゆく、という実感である。
3. 一時、隆盛を極めた「新書」ビジネスが最早、死に体である。
新書のビジネス・モデルは最早、完全に終わったのではないか?
書店に行き、時々、売り場職員・各売り場の担当者と話す事があるが、中で一番暗い顔をしているのが新書担当者である。
新書売り場は既に完全なカオス状態にある。
出版点数は爆発的に増えている。
出版社側でも、「不況だから、安い本が売れるだろう」誤った思惑と、さらに編集部の制作コスト削減の為に、本来、新書にすべきでないものまで、新書として出版する傾向にある。
その為、こうした業界混乱期には、安易に新書が増える傾向にある。
戦略なき、自滅行為とも言える大量生産である。
しかも、新書の存在意義は、元来、長期にわたってジックリ販売し、書店においても、直ぐに読者が必要なものを入手できるというところにある(あった)。
新書の本来の存在意義と、現実の出版形態が全く正面衝突し、矛盾をきたしているのである。
それ故に、書店の現場は大混乱状態にある。
見た目も同じような新書が、整理できないほど多くの点数搬入されても、現場はこれに対応する事が出来ないのである。
4.本日、特に印象に残ったのは、「アメリカ関連本」の棚が著しく縮小されている事である。
国際情勢関係でも、シナやアジア関連本が、出版点数で見ても幅を利かせており、今後も益々の量的拡大が目に見えている。
書店現場はこれに対応する為に、アジア関連本の場所(棚)を確保する事に必死である。
アメリカ本は必然的に隅にやられている。
一時期ブームだった「オバマ本」も、あるいは姿を消し、あるいは片隅に追いやられている。
かろうじて、メディア本のコーナーにその居場所を確保しているオバマ本もある。
善悪はともかくとして、これが現代の日本人の関心のトレンドを顕著に物語っている。
5. 雑誌の廃刊率は来年、益々増え、大量淘汰されるだろう。
廃刊される雑誌は全体として多かった今年であるが、特に、国際情勢関係の雑誌「フォーサイト」の廃刊は今の時代のトレンドを物語っている。
少なくとも私には大変衝撃的であった。
「フォーサイト」は、シッカリと予算をかけ、マスコミが報道しない価値ある情報を、特定の読者に提供するというビジネス・モデルであった。
これが、崩壊してしまった事の背後には、やはりインターネットの影響が大きいと思われる。
プロフェッショナルのジャーナリストがきちんと取材し、プロのアナリストがシッカリと分析予測した情報が、姿を消してゆくというのが現在のトレンドである。
情報源も明らかでない、無責任な言説や、風聞に近いものがニュースとして大手を振ってまかり通る傾向にある。
国や社会の行く末を思うと、極めて危険な傾向であり、こういった混沌とした状況の中から、全体主義的な傾向も生まれてくるのではないかと危惧している。
最近の民主党幹事長・小沢一郎の憲法違反の言動なども極めて危険な兆候である。
他にも書店ウォッチングや出版トレンドに関しては書き出せばきりがないので、今日はこのくらいにしておく。
シナ関連本の急拡大は、勿論、単なる自然発生的トレンドとして起きているわけではなく、シナが日本に仕掛ける無制限戦争がその背後にある事は確実である。
この事については、過日、またの機会に詳細に解説したい。