昨日のシンポジウムで特に力を入れて私が論じたテーマは、「東アジア共同体」が如何に成立不可能であるか?という事であった。
鳩山首相はあたかもバナナの皮を剥くように簡単に「東アジア共同体」の成立が容易であるかの如く語っているが、これは完全なる幻想である。
また、広くテレビ、雑誌等を見渡しても、東アジア共同体が、そもそも成立し得るものであるか?
また、成立させる事が善であるかどうか?についての議論が一切、成されていない。
これは、誠に異常という他はないだろう。
東アジア共同体を構築するとすれば、それは日本外交の、というよりも、日本自身の運命を大きく転換する事を意味する。
民主党は、この事をマニフェストの前面に立てて選挙戦を戦わなかった。
にも関わらず、この政策を実行しようとするのは、全くのマニフェスト違反である。
結論から言うならば、東アジア共同体に日本が入るとは、日本が独裁国家・シナの属国になる事を意味する。
それは、日本におけるデモクラシーの終焉と、日本文化の絶滅を意味する。
つまり、日本人が今日のチベット人やウイグル人の立場になる事を意味するのである。
東アジア共同体の成立が、如何に不可能であるかを昨日のシンポジウムでは論じたが、以下、それをごく簡単に復習してみたい。
第一に、ヨーロッパ共同体に参加した諸国は、全て民主国家である。
民主国家間でさえも、国家統合は極めて難しいことであった。
東アジアにおいては、最も危険な帝国主義国家であるシナは勿論、独裁国家である。
独裁国家と民主国家が国家統合し、1つの政治的実態を作る事は有り得ない。
もしあり得るとすれば、民主国家が滅ぼされ、独裁国家が民主国家を侵略するという状況しか考えられない。
第二に、ヨーロッパと東アジアでは、文面論的状況が全く異なる。
ヨーロッパ共同体を成立させた条件は、東アジアでは全く欠如している。
ヨーロッパ諸国は宗教的には皆、基本的にキリスト教圏に属し、人種的にも、ヨーロッパ人はほぼ皆、白人である。
つまり、国家は異なっても、白人キリスト教徒としてのアイデンティティーをヨーロッパ人は共有している訳である。
この共通基盤の上に、EUが初めて成立しえたのである。
歴史的に見ても、ヨーロッパは、過去の歴史を共有している。
かつてローマ帝国というヨーロッパのほぼ全域を覆う帝国が存在した。
この帝国が崩壊し、近代の諸国家、つまりイギリス、フランス、ドイツ、イタリアなどが成立した。
今日もヨーロッパ人は、ローマ帝国を自分たちの共通の歴史の一部として認識している。
このような歴史観は、東アジアには全く存在しない。
東アジアでは、宗教は、儒教・道教から、キリスト教、ヒンズー教、イスラム教、その他数多くの土着的宗教が存在し、全く共通基盤は無い。
人種的にも全く均質性を欠いている。
更に、既述したような歴史の共有感覚も全く欠如している。
第三に、経済合理性から言っても、東アジア共同体は、全く不可能である。
EUに統合されている、国家間の賃金格差は、約10倍である。
バルト三国あたりの賃金が最も低く、この賃金の10倍を、デンマークの勤労者は享受している。
10倍の賃金格差のある国家間で、経済統合を行なう事は、至難の業であるが、既に述べたような様々な条件に支えられて、ヨーロッパ人は統合のコストを負担する事を決意した。
とは言いながら、いまだにヨーロッパでは、EU共同体の成立に反対する声は特に経済的に恵まれた先進国の間で根強いものとなっている。
例えば食品の衛生基準や、自動車の安全基準にしても、ヨーロッパの中ですら、大きな混乱がいまだに存在している。
まして、東アジアにおいては、日本と最も低賃金の国家の平均的労働者の収入は、50対1程にもなる。
更に、食品や工業製品の安全基準等を考えるならば、経済統合は全く不可能と断言しても良い。
万が一にも統合をすれば、全ての安全基準は最も低い基準に合わせざるを得ないであろう。
東アジア共同体構想を少し距離を置いて眺めてみると、日本人は全く矛盾した事を行なおうとしているように見える。
食品の安全基準に関しては、赤福や、北海道土産で有名な白い恋人達、こんにゃく畑の件であれほど、神経質に製造者に責任を追及して来た日本人が、今や、毒入り餃子を平気で製造する、シナとの経済統合を考えるというのは、全く信じられない事である。
また、中央集権を悪とし、地方分権を善とする道州制論者達は、国家主権の分割・分断こそ正義であると信じているはずであるが、その同じ人々が、国家を更に大きな政治的単位に統合し、超国家的な組織体を創る事を善と考えるのは、なんとも理解しがたい事である。
鳩山首相の主張する東アジア共同体構想は、実は1998年以来、独裁国家シナが主張し続けて来た構想であり、事実上民主国家日本が独裁国家シナに呑み込まれるという以外の何物でもない。
日本人は、何よりもまず、この単純な事実に気がつかなければならない。
同日、三民族デモには出られませんでしたが、激励のメッセージを送らせて頂きました。
そして三民族連帯デモに参加された、台湾研究フォーラム代表、永山英樹さんに代読していただきました。(永山様、本当に有難うございました)
このシンポジウム会場でも、三民族連帯デモのこと、チベット・ウイグル・南モンゴルで起きている事についての話や同日の抗議集会の意義について取り上げさせて頂きましたが、今後も引き続き、こうした問題について、あらゆる角度から検証し、伝えるという事について参加させて頂きたく思っています