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世界経済の裏舞台

投稿日:2009,06,26


 6月26日付のファイナンシャル・タイムス誌にアラン・グリーンスパン元FRB議長が、論文を寄稿している。

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 「今後、もし景気が回復していけば、インフレが心配になるだろう。」等という点を述べたエッセイで、いわば常識的な内容であり、特筆すべき主張は特にないと思った。

 この論文自体については、対して言及するところは無いのだが、この論文を読み、ふと思ったことがある。

 グリーンスパンにしても、ポールソン米財務長官にしても、バーナンキFRB議長にしても、昨年9月のリーマンショックのはるか以前から、世界経済の大きな問題点を察知しており、大きな破綻が来ることは彼らの本音の部分では殆ど自明のことだったはずである。

 特に世界の巨大なアングラマネーがこの金融恐慌の引き金になることは、100も承知だったはずである。
かつて、マエストロと呼ばれ、世界中から尊敬されていたグリーンスパンの評判は、地に落ちた感があるが、彼は現役のFRB議長の時から世界経済の舞台裏を十分に知り、アングラマネーの巨大化の危険性を十分に知りながら、敢えてそれに手をつけることはしなかったのである。
謂わば、善も悪も知り尽くした上で、取り敢えず自分の任期中には、破綻を起こさせないという綱渡りのマネージメントをやっていたわけである。
 今日、彼を非難する人は多いが、彼はゲームのルールを熟知した上で、精一杯自分の立場を守ろうと行動してきたに違いない。
 リーマンショックが起きた時のポールソン財務長官にしても、何しろ元ゴールドマンサックスの会長なのだから、巨大アングラマネーが引き起こした世界の金融バブルの危うさについては、十分に知っていたに違いない。

私が一番賢いと思うのは、クリントン政権の財務長官を務めたルービン氏である。
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ITバブルを招来し、アメリカの株価を上昇させて、国民を大いに喜ばせた後、最早ITバブルが限界と見るや、サッと身を引き、後任をサマーズ副長官に任せて引退してしまった。

 彼なども、世界経済の舞台裏の危うさについて、元ゴールドマンサックスの会長として、十分に知っていた人物である。


いずれにせよ、これらの大物たちは、いずれも経済が好況に沸いている時ですら、その影でアングラマネーを中心とする経済のブラックホールが、益々巨大化しているという事実にも十分気が付いていたはずである。
  裏も表も舞台の上も、舞台の裏も、十二分に知ったうえで、経済をマネージメントしようとしてきた面々である。
 ヨーロッパの第一級の指導者にしても、同様であろう。


 それに比べて、日本のエリートはどうだろうか?
政界・官界・財界のいずれを見ても、リーマンショックの前において、世界経済の裏のゲームや、そこに待ち受けている巨大なリスクについて、明確な認識をしていたものは殆どいなかったのではないか。
日銀や、財務省のトップレベルも、アングラマネーの巨大化が引き起こした金融バブルの巨大化とその危険に対してハッキリとした認識を持っていたものは殆どいない。

 これについては細かな説明は要らないだろう。
白川日銀総裁の顔を見れば分かる。

 政治家の中にそういう情報を持ったものも勿論、皆無であった。
要するに、世界経済の特に、金融の裏舞台で何が起きているのかについてシッカリとした認識をしているものは日本のエリート層には皆無だった訳であるこれが日本の悲劇である

 グリーンスパンは悪人には違いないが、全てを知った上で見事な悪人ぶりを演じてきている。
日本のトップエリートは、彼らに比べれば、ひ弱な「善人」ばかりである。

 私は、自ら発行しているレポートの2008年1月号で、世界の同時金融危機の到来をハッキリと予測した。
何も、秘密情報でこれを予測したわけではない。
いくつかのソースからの情報はあったものの、基本的には公開情報と、推論からこの結論に到達したのである。

 私が予測できた事を、グリーンスパンやポールソンが予測できなかったはずは無い。
彼らは、悪を悪と知って、行ないながら、崩壊の時を迎えたのである。
日本とは何という違いであろうか?

 日本のトップエリートはあまりにひ弱であり、世界の裏舞台からも疎外されている。


 政治家や官僚や財界人が「善人」である必要は無い。
日本からは一流の「悪人」も払底してしまったのである。