土曜日6月5日午後、チャンネル桜で、我々が出版した『永久国債の研究 (光文社ペーパーバックス)
』をテーマに、3時間のテレビの討論会の録画が行われた。
[ 6月 12日(金) 20:00-23:00 スカパー!219ch 放送 予定]
4人の著者(調所一郎さん、松田学さん、有澤沙徒志さん、私、藤井厳喜)の他に、本の編集者である山田順・光文社ペーパーバックス編集長と金融ジャーナリストの山本伸さんの2人にも討論に加わっていただいた。
司会はチャンネル桜社長の水島総さん。
永久国債の議論に入る前に、現在の世界経済と日本経済がどのような状況にあるかということに関して、各人が思うところを披瀝した。
共通していたのは、現状が依然として非常に厳しい状況にあるということである。
日米共に株価が僅かずつではあるが上昇し、最悪の場面は既に終わった、という楽観論も幅を利かせているが、世界の経済は非常に大きな転換の局面にあり、アメリカを中心に発生したバブルの後始末をするには、なお相当の時間と苦労が必要である、というのが出席者の共通認識であった。
有澤さんは、
ウォールストリート17年の体験から、専門的知識に基づいて、世界の信用危機の回復には相当の構造転換が必要であることを指摘してくれた。
有澤さんが当日、用意してくれたグラフによれば、信用危機がスタートした時点における世界の流動性資金はなんと、世界の総GDPの620%にまで到達していたという。
「流動性資金」とは、要は金融資産として現金化できる資産という意味である。
この流動性資金の約41%がなんと金融派生商品であり、さらに流動性全体の38%が、債権(証券化された債務)であった。
つまり、金融資産とみなされるものの約80%が、いわゆるペーパーマネーだったのである。
これに対して、本当の現金は金融流動性全体のたった2%しか占めていなかった。
実体経済もの6倍もの金融資産を金の貸し借りによって創り出していたのが、世界経済の危機の実態だったのである。
別の言い方をすれば、本当に存在する資産である現金の50倍もの金融資産を金の貸し借りによって生み出していたのが世界経済の恐るべき実情であった。
このギャップを調整するには、マダマダ長い時間がかかるし、多くの金融機関や個人が資産を失うことであろう、というのが有澤さんの予測であった。
(有澤さんが示した統計数字については『永久国債の研究 (光文社ペーパーバックス)
P35 』で詳しく解説してある。)
調所さんは、自らのご先祖である薩摩藩の重役、調所広郷が当時500万両にも達していた薩摩藩のシャッキを250年賦という非常手段を用いて如何に解決したか?について、分かりやすく解説してくれた。
松田さんの話の中では、永久国債の問題もさることながら、官僚の天下りに関する話が非常に興味を引いた。
財務省の幹部級の人でもリタイアした後の年金は年間200数十万円しかないというのである。
この為に官僚は天下り先を求めざるを得ず、これが様々な問題を生んでいる、という指摘に討論会の参加者はみな、驚かざるを得なかった。
高級官僚といえば、かつてのイメージで言えば、十分な恩給をもらい、生活は安定していると思っていたが、実はそうではなかったのである。
松田さんの見解では、永久国債とはしいて英語で言えば、ドネーション・ボンド(日本語;寄付債権)とでもいうべきものである。
ドネーションは、元来、献金であり、寄付であるから一方的に個人が公の為に個人財産を贈与することである。
ボンドとは債権のことであって、借金の証文である。
個人からいえば、政府に金を貸すということである。
だから、ドネーション(寄付)とボンド(個人が政府に金を貸すこと)とは、元来全く別物なのであるが、この2つを結びつけようというのが、ある意味で「永久国債」の本質である。
永久国債が一方的な政府への寄付よりも優れているのは、債権であるから必要となれば、これを市場で売って現金化することが可能な点である。
つまり、10億円の永久国債を買ったものは、資金が必要となったときにこれを市場で売ることによって、元の資金を回収することが出来る。
普通の個人にとって一方的に公に資産を寄贈することは中々難しいが、永久国債ならば完全に資産を失うわけではないので、国に資産を預けておく、というような感覚で個人資産を公の為に役立てることも出来るわけである。
以上のようなところが、松田さんの発言の要点であったと思う。
山田編集長の発言に関しては、印象的だったのは、永久国債に関しての発言よりも寧ろ、オバマ米大統領に関する発言であった。
山田編集長によれば、オバマの米金融界との繋がりは思った以上に深く、巨大な選挙資金のかなりの部分をウォール・ストリートから調達していたのである。
アメリカ金融界が被った巨大な損害を政府の資金で補填し、これを救済するというのがオバマ政権の真の使命である、というのが山田さんの意見である。
2008年はアメリカの金融産業にとっては大変な災厄の年ではあったが、それでもジョージ・ソロス氏のヘッジ・ファンドなどいくつかのファンドは大きな利益を上げている。
現在、先見性のある(狡猾とも言い換えても良いが)ヘッジ・ファンドは、市場に売り出される不良債権を大量に買いあさっている。
例えばGMのことを考えてみよう。
GMの債権の評価は現時点では低いが、政府が責任を持ってGMを立ちなおらさなければならない。
まずGMの債権がうまくいけば当然、債権は値上がりする。
GMの債権がもし、巧くいかなければアメリカ政府は更に巨額の資金を投じてGMを支えなければならない。
つまり、公的資金によってサポートされているので、GMの債権を安心して買うことが出来るという仕組みである。
つまり、ヘッジ・ファンドなどのストラテジスト達は、政府の公的資金を事実上の補助金として利用して、金融投資をしていることになる。
山本伸さんは自ら責任編集された『環境バブルで日本が変わる! オバマ大統領「グリーン・ニューディール」の激震 (別冊宝島1617)
』を出版されている。
私もブログで何回か述べたように、この別冊宝島の基軸となる座談会に出席させていただいた。
山本さんは今後の世界経済には3つの可能性しかないと見ている。
それは、第1に戦争、第2に長期停滞、第3に、環境ビジネスをエンジンとした経済成長の三つの可能性である。
当然のことながら、この三択問題の中で最良の回答は、「3」の環境ビジネスシナリオである、というのが山本さんの意見である。
永久国債も環境ビジネス発展の為に使えれば有効である、というのが彼の見るところであった。
司会者の水島社長には事前に『永久国債の研究 (光文社ペーパーバックス)
』の本を読んできて頂いたが、経済の専門家でないにもかかわらず、非常によく永久国債というものの本質を理解してくださったと思う。
失礼な言い方かもしれないが、私としては司会の水島社長をいわばテレビの視聴者の代表のように思って、お話させていただいた。
日本経済の行く末を厳しく見つめ、いたずらな楽観論を廃するという点では、水島社長と討論参加者の我々の立場は全く同じである。
やはり、高いレベルの公共心を持った国民が多く居なければ、今日の日本の財政危機を救うことは出来ない。
水島社長は、チャンネル桜の2000人委員会のメンバーの人たち(月一万円をチャンネル桜に寄付している)のような高い公共心のある人々が永久国債を支えれば、日本国の財政危機の解消にも役立つと納得してくださったように私は思った。
詳しくは、是非!
6月 12日(金) 20:00-23:00 スカパー!219ch の放送を見ていただきたい。