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「白薔薇の 降る昼下がり 水眠ル」 薔薇と俳句

投稿日:2009,06,01

 ここのところ、雨がよく続く。

先日、晴れた時、近くの公園を少し散歩をした。

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薔薇の花がみごとであった。

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本日は、薔薇について私が作った俳句を書いておこうと思う。

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 「白薔薇の 降る昼下がり 水眠ル」  厳喜  

 薔薇園は不思議な場所で、そもそもこの空間は日本に属していない様である。
欧羅巴の幻想的異空間が、我が国に移植されたのが薔薇園である。
それゆえ、悪魔もいれば天使もいる。

 レッド・デビルなどという深い紅色の薔薇の葉陰には、小悪魔などが居ても少しもおかしくはない。
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白い薔薇の蕾の中には、無垢な天使が眠っているに違いない。

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やや盛りを過ぎた頃の薔薇園で、午後の気怠い(けだるい)空間に、ハラハラと棚の白薔薇が舞い散ってゆく。
足元の壊れた噴水の回りでは、水も眠っている。
時の流れの止まったような至福の一瞬である。

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 何故か「水流ル」の「」は片仮名である。
説明のしようがない。ただその様に出来た。


 同じ折に、以下の四句を得た。


 一輪車 乗り捨てられし 薔薇の園      厳喜  


 天(そら)低く 紅薔薇の香や 重々し      厳喜 

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 薔薇枯れて 深き日射しに 時熟れぬ      厳喜 

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 紅の香に この永き午後 薔薇世界      厳喜   

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 英語に、Life is not all roses. 「人生は楽しいことばかりではない」という諺がある。
言わずもがなである。
しかし、その現実主義を踏まえ、むしろ 「Life is all roses.」と言い切ってしまう事の方が男らしいのではないか。

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 俳句・和歌に「連作」という手法がある。
一つの主題の下に、複数の句歌を創作するのである。
当然、全体の構成も重視される。
「連作」は勿論、「連句」ではない。

 以下は、連作の試みの一つ


 『薔薇』  (連作)

 蒼空(あおぞら)の 澄(す)めば紅(べに)薔薇 紅滴る(べにしたる)
 白薔薇は 色無き憂い 耐えおりぬ
 黄の薔薇の 腕(かいな)を雲に 延ばしつつ 
 薔薇色の 薔薇の幼き 面(おもて)かな 
 薔薇枯れて 遠き海鳴り 聴きおりぬ 
 小(ち)さき薔薇 この世の秘密 知るが如(ごと)  
 地より生(は)え 薔薇天上に 至る華(いたるはな) 


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 一句一句は独立してはいるが、全体として、一つの世界を表現せんとの試みである。

 五番目の「薔薇枯れて」の句、戯れに次の如く英訳した。


 Withering slowly   
Listen to waves of far sea  
Roses of winter   

※ wither (動) 枯れる、萎む  


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 篤学の士の御叱正を請う。

近年、英語圏における俳句創作もなかなかに盛んなりと聞く。
季語、韻律重視の古典派から、無季語、自由律の革新派まで各派ある由。
これまた英語俳句に精通の士あらば、お教えを請いたし。

                     藤井 厳喜 (詩人)


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