パキスタンが国家崩壊しつつある。
パキスタンは核兵器保有国家のひとつである。
この国が崩壊すれば、その保有する核兵器がイスラム過激派の手に渡る可能性も大いにある。
アフガニスタンで、勢力を吹き返していたタリバン勢力が国境を越えてパキスタンでもその勢力範囲を広げつつある。
パキスタン政府は、イスラム過激派の自治を認め、その勢力の拡大を防ごうと試みたが、失敗に終わった。
今後、アフガニスタンが混乱に陥るのみならずパキスタンもまた国家秩序の崩壊に向かう可能性がある。
既にアフガニスタンでは、タリバン勢力がその支配地域を拡げ、カルザイ政権は首都カブールの周辺を統治する事が精一杯である。
ソ連邦が1991年12月に崩壊した時は、ソ連の保有する核兵器が拡散する事は防げた。
これは、極めて幸運な事であった。
大帝国が崩壊する時には、それに伴い、多くの混乱が発生するのが当然の状況である。
歴史的に見て、ソ連邦の崩壊は極めてスムーズに行われた。
ソ連が崩壊したときには、核兵器の保有国は増えなかった。
これに関しては、当時のソ連のゴルバチョフ政権に感謝しなければならない。
と同時に、ゴルバチョフ政権が、アメリカと協力しながら、核兵器の拡散を抑制したことを我々は高く評価するべきである。
ところがパキスタンの場合、国家が崩壊しても、核兵器の拡散を防止する体制は準備されていない。
世界で今、最も注目すべき地点はアフガニスタンとパキスタンである。
一言付け加えれば、パキスタンの背後には、常にChinaの影がある事を忘れては、ならない。
東アジアにおいては、米中二大大国がその勢力の拡大を目指しており、米中二国の勢力圏争いが常にこの地域の隠された国際政治のテーマである。
その事については、私の著書『米中代理戦争の時代』において、非常に詳しく述べてある。
この時期にこそ、参照していただければ、まことに幸いである。