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昨夜、『路の会』にて、井尻先生の講演を聞く

投稿日:2009,05,01

昨夜、4月30日午後6時からは、西尾 幹二先生が主催される「路の会」の月例会で、井尻千男先生の講演を拝聴した。
タイトルは、「日独伊、三国同盟の経済的必然性」であった。

私にとって特に興味深かった話の要点は
井尻先生の話の中の、

「日独伊の三国は、国民的結束性が高く、多くの植民地を持たず、国内に人種差別も無い。
それ故に真の“国民経済”(national economy) を経営できる立場にあった。
戦前の世界大不況からの出口を各国が探し求めた時に、この三国のみが本当の意味の国民経済を実施できる立場にあった。
それに対して、イギリスは多数の植民地を抱え込み、人種差別を内包し、経済ブロックを作ることは出来ても、国民的平等を基盤としたナショナル・エコノミーの建設は不可能である。
アメリカは勿論、有色人種に対する強烈な差別があるが故に、これまた国民の平等に基礎を置くナショナル・エコノミーの建設は不可能であった。
この点で、日独伊が連携関係に入る経済的必然性があった。」
という事であった。

これまで、保守派の論客といえども、日独伊三国同盟には非常に否定的な評価を与えてきた人が多かった。
日独伊三国同盟の締結が、結局、対英米戦を不可避としたからである。

しかし、井尻先生の論点は、これとは全く異なり、ナチズムのユダヤ人差別には嫌悪感を持つものの、ナショナル・エコノミーの運営という点では、三国に共通の基盤があったというまことにユニークなものであった。
目から鱗が落ちる思いでお話を傾聴した。

日独伊三国同盟は、地政学的に見ると、日本にとっては殆ど意味が無かったといえる。
イタリアは軍事的にあまりに脆弱で、ドイツは地理的にあまりに遠く隔たっていた。
日独伊三国同盟といっても、米英ソ連に対して、対立する勢力として相互にモラル・サポートをしあう程度のものであった。

私も、ユダヤ人の友人が多く、ナチズムのユダヤ人排斥と虐殺には大いなる嫌悪感を覚えるものである。
しかし、日独伊の三国は、大きな植民地も持たず、国民的結束性が高く、ナショナル・エコノミーのマネージメントを可能とする条件を備えていた、
というのは、事実であろう。

イタリアとドイツの国家的統一はヨーロッパ諸国の中では、大変に遅かった。
イタリア王国の統一は1861年、つまり明治維新の直前であり、ドイツの統一は1871年、明治4年であった。
しかし、日本、ドイツ、イタリアには、国民を統一するもう一つの重要な要素がある。
それは神話の存在である。

ドイツ民族には、ゲルマン神話があり、イタリア人には、ローマ神話があり、
日本人には日本神話がある。
ドイツやイタリアの場合、キリスト教により、神話と国民の間に歴史的断絶があるとはいえ、神話が民族の大事な伝統の一部を構成しているのは確かであろう。

共通した神話を持つということは、最も強く民族を団結させる中心的な力である。
井尻先生の講演の趣旨をさらに前向きに展開すれば、次のような見解が成り立つのではないか。

第一に、イギリスやフランスが、実行したところの近代の植民地主義が植民地のナショナル・エコノミーを破壊したのみならず、イギリスやフランス本国のナショナル・エコノミーを破壊してしまったのではないか?という事である。
これが、無制限な人とモノの移動を前提とする今日のグローバル・エコノミーに繋がってきている。
イギリス帝国が唱えた自由貿易とは、植民地を搾取するイギリスにとっての有利な交易体制であるというに過ぎない。
今日、アメリカの唱える自由経済も基本的にはアメリカにとって有利な金融経済体制ということであろう。

第二に、今日の世界的大不況からの脱出を模索する時に、やはり我々としては国民経済の結束と再生を第一に考えるべきであり、自由経済=自由貿易=自由競争=市場原理主義=グローバリズム=善
 という前提を捨てて、根本的に物事を考え直さなければいけないのではないか?という事である。

以上は私の言葉によるまとめであるが、井尻先生自身もそれと似た見解を講演中に述べられていたと思う。


私が半ばジョークとして以下のようなことを質疑応答の時間に申し上げた。
「それは現在、メキシコから世界中に伝播している新型インフルエンザにしても、いわば人間が地球上を無制限に移動することの一種の反動としてこういう事が起きているのではないか?
直感的にではあるが、地球の環境が人間の現在の食糧生産のあり方や、経済のあり方に対して、一種の拒絶反応を表している、
その一つの表れがこういったインフルエンザではないのだろうか?」
とまことに直感的にではあるが、そう感じた。

「実は私は(4月8日にメキシコから帰国したので)、新型インフルエンザのウィルスを持っているかもしれませんよ」
冗談で申し上げたところ、一部、本気にされた方がいたようだったのにはマイッタ。
私は極めて健康です。
しかしひょっとして・・・。(苦笑)