【 3 月 5 日テレビ討論】ホンハイとシャープの関係から見る日本産業構造のゆくえ
YouTube : https://youtu.be/Ix49vSnr2tE
新唐人テレビ特別企画番組第3弾!!
http://jp.ntdtv.com/
【出演】司会:林建良、 コメンテーター:藤井厳喜、河添恵子
中国・台湾・国際問題スペシャリストの3賢人が集結
豪華ゲスト陣の最新情報による熱い討論をおおくりします!
【日時】2016年3月5日(土)19時から21時
【内容】「鴻海(ホンハイ)とシャープの関係から見る日本産業構造のゆくえ」
01.鴻海の歴史、郭台銘とは何者か?
02.郭氏と中国共産党の関係
03.アップル社との接点
04.郭氏の経営手法とは?
05.フォックスコン投身自殺事件
06.血汗工場と言われるゆえんとは?
07.買収のバックには中国共産党の影?
08.シャープの現状と未来
09.日本企業に与える影響は?
10.日本産業の再生に欠かせないものは何か?
【鴻海(ホンハイ)のシャープ買収は資本逃避の一形態】
CFGレポート2016年2月号・短期展望5 より引用。
台湾に本拠を置く鴻海(ホンハイ)精密工業のシャープ買収がいよいよ大詰めに入った。
最終的な結果に関しては予断を許さないが、買収が成功するとの前提で、その鴻海の背後にある事情を指摘しておきたい。
1) 鴻海は台湾の企業であると言われているが、その実体はチャイナで100万人以上の雇用を抱えるフォクスコンである。
ここがアップルのアイフォンの受注生産等を引き受け、安価な製品の大量生産という単純なビジネスモデルで大発展してきた。
現在のチャイナでは中国共産党との親密な仲なくして、大きな商売の成功はありえない。
郭台銘CEOは、中国共産党幹部に深く広い人脈を築く事によって、巨大な企業を育成してきた。
その経歴を振り返れば、鴻海は台湾の企業ではなく、チャイナの企業であると認識すべきだ。
2) 台湾の政治においては、郭台銘CEOは一貫して、国民党の強力な支援者であり続けてきた。
過去には「選挙で民進党が勝てば台湾にはもう投資できない」等という露骨な発言も繰り返して来た。
2014年11月29日の台湾統一地方選挙では、複数の国民党候補を熱心に応援した。
プライベートジェットやヘリを多用して、台湾中を駆け巡り、国民党候補の選挙応援に駆け付けたが、彼らは全て落選してしまった。
郭台銘氏は、1950年に台湾で生まれているが、彼の両親は山西省出身で戦後台湾に来た、所謂「外省人」である。
郭CEOは自分をタイワニーズであるとは認識しておらず、自身をチャイニーズと認識している。
馬英九総統時代は、中国国民党と中国共産党の第3次国共合作時代であったから、国民党支持の鴻海がチャイナ本土で大発展した事には何の不思議もない。
謂わば、鴻海は「国共合作企業」としてここまで発展してきたのである。
中国共産党からすれば、「経済を以て政治を包囲する」という政策で台湾の取り込みを図ってきたが、まさにその戦術の尖兵となって、大成長したのが鴻海であった。
3) 鴻海は、チャイナで全く政治的妨害を受けなかったわけではない。
薄煕来とのコネに頼って四川省に大投資をしたが、これは失敗に終わっている。
フォクスコン工場で自殺者が相次いだと言われている事件も、現地における政治的嫌がらせであったとの説も囁かれている。
裁判で敗訴した事もある。
しかしこれらの事件は、郭CEOが中国共産党内の派閥争いで敗者側と組んでしまった結果であり、鴻海が中国共産党と深い関係にある事自体を否定するものではない。
党内派閥抗争の負け組に賭けた為に、自社も被害を被ったというわけだ。
4) 現在、郭CEOは、チャイナで財を成した富裕層の全てがそう考えているように、如何に早く、自らが築いた富を海外に逃避させるかに躍起になっている。
鴻海によるシャープ買収も、この一環と考える事が出来る。
郭CEOは自らをチャイニーズと意識しているが、それは現在のチャイナにおけるビジネスを最重要視するという事を意味しない。
彼は典型的な「華僑意識」の持ち主である。
華僑にとっては、お金儲けが出来るところが彼の故郷である。
郭CEOは、次なる生産拠点として、インドへの投資を開始しており、更に低賃金労働力と市場を求めて、アフリカ進出まで視野に入れている。
チャイナ沿海部では、労働賃金が上昇しており、低賃金労働を利用した大量生産という鴻海のビジネスモデルは通用しなくなってきている。
そこがダメならば商売の拠点をインドに移そうが、アフリカに移そうが、全く拘泥しないというのが華僑の発想である。
チャイニーズ意識があるからチャイナ本土の経済発展に拘る、という事は全くないのだ。
5) 郭CEOが海外に資本を逃避させるとはどういう事か。
それは彼が中国共産党幹部から預かっている資産を海外に逃がすという事でもある。
これはチャイナ・ナンバーワンの不動産王である李嘉誠がその不動産資産を全て売却し、イギリスを中心に海外へ逃避させたことと全く機を一にしている。
李嘉誠の資産は表面上は彼の名義であっても、その全てが彼個人の所有物ではない。
彼は中国共産党幹部や富裕層の資産を預かり、運用しているファンド・マネージャーなのだ。
郭CEOにしても同じことである。
彼は委託されている財産を早く海外に逃がさなければならない。
当面チャイナ経済のバブル崩壊は更に深刻となり、又、習近平指導部は経済への統制を強め、資本の海外持ち出しをより厳しく規制するだろう。
大規模なM&A等は行ないにくくなるので、今がラストチャンスなのである。
それ故に、郭CEOはシャープとの契約を急いでいるのだ。
それにしてもそもそも何故、海外に資産を持ち出せるかと言えば、それは、郭CEOや李嘉誠に資産を預けている中国共産党幹部がそれを許可しているからである。(CFR2016年2月号・長期展望1参照)
6) 鴻海は6600億円規模のシャープ支援総額を打ち出しているが、この全額を鴻海自身がキャッシュで支払う必要はない。
日本の銀行から借り入れるという手もある。
又、今回の買収が成功するとみられている大きな理由の1つは、シャープのメインバンクである、みずほ銀行と東京三菱UFJがこれを推進した為であると言われている。
鴻海が銀行への負債の債務減免を要求しないという条件に惹かれて、両行はこの買収に賛成したようである。
みずほ銀行は既に、鴻海に対するシンジケートローンの幹事を一度ならず務めている。
鴻海は日本のカネを使ってシャープを買収するという策を用いるのかもしれない。
今後はチャイナ軍部の為に、シャープの技術が悪用される危険がある。
7) 郭CEOは、シャープの現経営陣を首にしない事や、40歳以下の雇用を守る事を約束している。
しかしこれらはあくまで口約束である。
優れた経営者である郭CEOが、倒産した会社の経営陣をそのままに温存する事は考えられない。
優れた製造技術はあるが、経営方針が間違っていた為に、シャープは倒産したのである。
そういった企業の経営陣を買収した新企業のトップがそのまま温存する事は有り得ない。
恐らく現経営陣は、徐々にいびり出されるか、あるいは名目的に残務処理的な子会社のトップに移動させられる事になるのではないか。
又、40歳以下の雇用を守るとはどういう事か。
それは現在、35歳のシャープ社員が、今後20年間勤務出来る事を意味しない。
35歳の社員は、5年後に首を切られる運命なのだ。
即ち、40歳以下の雇用を守るとは、40歳定年制を敷くという事である。
日本的な甘い幻想は、一切、抱くべきではない。
鴻海側はシャープ株式の3分の2を抑え、役員の過半を押さえる方針である。
取締役会を抑え、人事権さえ握ってしまえば、あとはやりたい放題だ。
シャープは完全に華僑企業となり、やがてシャープのブランドも消滅するだろう。
シャープという企業自体が今回のM&Aによって消滅すると考えた方がよい。
残念な事だが、歴史的に役割を終えた企業は、市場から去ってゆかざるを得ないのだ。
社会の新陳代謝に伴い、産業界も新陳代謝する。
何百年の暖簾があっても、時代にそぐわなければ、企業は速やかに消えてゆく。
この栄枯盛衰を止める事は出来ない。
せっかくよい製造技術を持っていた会社が日本の企業でなくなり、その社名が消えてゆくのは誠に残念な事だが、あまりエモーショナルにこの問題を考えるべきではないだろう。
ただ、日本人として心しなければならないのは、シャープ倒産の原因の1つが、社内の派閥争いだったという事だ。単なる経営戦略上の失敗であれば、まだ回復は可能であったろう。
しかし社内の派閥抗争が宿痾となり、終にどうにもならないところにまで追い込まれてしまった。
日本の組織がダメになる時の典型的なパターンであった。
8) 鴻海は、チャイナ南部の広西チワン族自治区の南寧市に既に2010年に進出していたが、今後そこに大型産業パークを建設する計画を発表した。
インターネットと接続するスマートテレビなどの次世代家電製品の受託生産の拠点として、大規模な発展を目指すという。
「インダストリー4.0」の技術導入をこの産業パークで実現するとも発表している。
先ずこの大型産業パーク構想自体が、本当に実現するものかどうかは分からない。
資産の海外逃避を隠蔽するための陽動作戦かもしれない。
もし現実にこの計画を実行するとすれば、それは中国共産党が考えるチャイナ南西部を拠点としたインドシナ半島制覇の経済・軍事戦略の一環である。
チャイナ南西部は最も経済発展が遅れており、その分、人件費が安い。
南寧市はベトナムに国境を接している。
中国共産党は1990年あたりから、チャイナ南西部を拠点にして、鉄道網をインドシナ半島全域に展開し、インドシナ全体をチャイナの経済圏に、そしてやがて政治的勢力圏に組み込もうという壮大な計画を、展開している。
ランドパワーの常套手段としての鉄道網を利用しての、覇権確立である。鴻海の南寧市への大型投資は、このインドシナ半島制覇構想という国家戦略の線に沿った極めて政治的なものである。
鴻海はこのようにして、中国共産党の威光に沿った投資活動を行なうという姿勢を見せている。
当面のご機嫌の伺いの為に、このような大構想を打ち出した可能性もある。
ちなみに鴻海の南寧市における2015年の生産額は282億元だが、2020年までにこれを年間1000億元に急増させる計画である。